レコード芸術「最終号」

 2023年7月号をもってレコード芸術が休刊した。

 

 まだ全部読んでいないのだが,いくつか気になること(文句を言いたいこと)があるので,書いておく。

 

 「休刊」であって「廃刊」でないことは紙面でもはっきり書いてあるわけだが,何人かの執筆者が「最終号」とはっきり書いているは気になった。例えば157ページの國土潤一氏など。どんな思いでそう書いているのか分からないが,無神経で気に入らない。あえて抵抗の意味を込めてそう書いたのかもしれないが,それならそう書くべきだ。

 一方,「現在の本紙での・・・最終回」(82ページの増田良介氏)と言葉を選んで書いている人もいて,こちらの方が誠実なのは間違いない。

 また,76ページで長木誠司氏は「(この項続く)」とあえて書いている。何とか抵抗を示したかったのだろう。で,続きはいつどこで読めるのか?「ディスク遊歩人」は毎号楽しみに読んでいたが,長木氏の思いが強すぎたのか,今回は特に難解だった。

 

 休刊の前に,ためておいた記事を出し尽くさないと思ったのだろう。巻頭のインタビューが2本になり,これまで2回に分けて掲載されていた「青春18ディスク」が1回分に。そんなこんなで増ページになったので,特別定価1,540円(通常1,430円)となったが,特別定価とするほどの内容かは甚だ疑問。増ページの要因のもう一つが特集2の「レギュラー執筆者56人+α総登場 『レコ芸』で出会ったこの一枚」だと思われるが,完全に蛇足だ。

 そんな取って付けたような特集ではなく,休刊前に71年間を総括するような記事があってもいいと思うのだが,そういった類の記事は全くなし。

 それでしれっと特別定価で出してくるような姿勢が,読者離れを加速させたのではないか。

 

 

 一番頭にきているのは,付録の問題である。

 7月号の発売日の数日前に,たまたまツイッターを見たところ,付録として指揮棒とポストカードが付くという。さっそくネット書店をいくつか見たが,数量限定ですでに売り切れだった。

 もしかして書店でならと思い,お昼頃いつもの書店に行くと,すでに売り切れ。嫌な予感がしたので,取り急ぎネットショップで1冊注文し,とにかく早く読みたいので夕方書店回りをして1冊購入できたが,やはり付録はなかった。無駄に2冊買ってしまったが,1冊は保存用にするしかあるまい。ネットでは,既に入手困難になっているという情報もあり,買えなかった方には申し訳ないのだが。

 付録が付くことは,6月号の「次号予告」には何の告知もなく,発売日近くなってインターネットでこっそり出ていただけのようだ。

 こんなやり方では,おそらく。現在のレコ芸の主要な読者である60代以上の方は,ほとんど知らずに付録をもらえず終わってしまったのではないか。知らぬが仏とはこのことだ。音楽之友社のサイトでも,付録については何も書いていない。

 6月号でしっかり告知し,欲しい人はすぐ書店で予約できるようにすべきだった。

 こういうところからも,読者を軽視する姿勢がよく分かってしまった。特集に編集部の人が書いている場合ではないのだ。

 

 もう一つ,読者軽視と思わざるを得ないのが,「クラシック・データ資料館」の扱いである。とりあえず9月30日までは利用可能とのことだが,それは当然のことであって,その後は現在検討中だという。タイミングなどのデータがないなど不完全なところもあるが,非常に貴重なデータで,音楽之友社としてもレコ芸とともになくしてよいものではないと思われる。

 ということで,今後はしれっと利用料を取るのだろうか。それとも何かと抱き合わせでお金を取るつもりか。

 そんなこんな考えると,レコード・イヤーブックを付録に付けて,年1回だけレコ芸を発売する,ということもあるのかもしれない。

 

 7月号の内容についてはまた書くことがあるかもしれないが,総じて残念な終わり方だったのは間違いない。とにかく,読者を大事にしていないなという一言に尽きる。

 最後の特集の巻頭言が,レコ芸衰退の犯人の一人だと思っているY氏だというのも残念極まりなく・・・。

 

 

福島県立医科大学の次期理事長予定者選考について(その9)

 何事もなかったかのように竹之下理事長の3期目がスタートし,報道も何も全て,この件については終わってしまったかのようだ。

 オンライン署名は,これを書いている時点で1,800人弱に過ぎず,発信者の方の活動も終わったようだ。黒田元教授らの動向も全く聞こえてこない。

 「財界ふくしま」も6月号からは記事がなくなってしまった。S社との関係などについて突っ込んだ取材があるのかと期待したが,全くの期待外れに終わってしまった。

 ツイッターでも,学内の事情も含めて本件の疑惑について様々に発信されていた,某整形外科医の先生がこの件についてはとうに発信をやめてしまっている。どこかから圧力がかかったのではないかと思わざるを得ない。

 

 このように,騒ぎが収まったかと思われた5月半ばになって,整形外科の新しい主任教授の就任が発表された。

 九州大学医学部の准教授だった松本嘉寛氏である。

 新聞記事を見る限り,これまで福島とは縁のない方のようである。九州というと,竹之下理事長が鹿児島出身だということが思い起こされるが,知り合いだったのだろうか。それにしても,随分決まるのが早かったという感じがする。

 専門は骨軟部腫瘍とのことで,菊地先生と紺野先生が築いてきた腰痛の専門家ではないようだ。腰痛の福島県医大は,どうなっていくだろう。

 おそらく,菊地先生,紺野先生の弟子にあたる先生方のかなりの数が大学を離れるのではないかと思われる。医者の世界というのはそういうものだ。そこに,松本新教授がどれだけ九州から医者を連れてこられるか,というのがポイントになる。

 いずれにせよ,少なくとも一時的には福島県医大の整形外科は弱体化するだろう。

 外から,縁もゆかりもない教授を任命したというところに,理事長の意志が感じられる。菊地色,紺野色を排除しようということに違いない。整形外科の先生方はそのことを強く感じておられるだろう。気に入らないなら出て行けと言われているように感じるだろう。

 腰痛の福島県医大の伝統は,終わることになる。

 

 このブログでのこの件の記事も,これで一旦は終わることにする。結局,何も明らかにはならなかったし,マスコミは何も明らかにする気はないということが分かっただけだった。

 

 

福島県立医科大学の次期理事長予定者選考について(その8)

 「財界ふくしま」の2023年5月号が,「疑惑の目が向く福島医大の“ある寄附講座”の奇妙な動き 寄付金の情報開示も拒む隠蔽体質には呆れるばかり」と題して福島医大の理事長選についての記事を載せている。

 

 「財界ふくしま」には,竹之下理事長に関する疑惑がたくさん寄せられているということなのだが,具体的な疑惑が書かれているわけではなかった。

 唯一,ドイツの医療機器メーカーとの不公正な取引について書かれていたが,どんな疑惑なのかは何も書かれていなかったので,ここではそのメーカーの名前は伏せておく。「財界ふくしま」にはそのメーカーの名前がはっきり書いてあるので,気になる方は読んでほしい。

 

 記事のタイトルにもあるとおり,記事の内容の多くは寄附講座に関する疑惑であったが,それは,以前紹介したことのある上昌広氏が指摘するいわき市に関するものだった。後は,これも上氏が指摘していた医療事故の件と,もう一つ別な寄附講座に関する話。

 上氏が問題視している医療事故と寄附講座の件については,「財界ふくしま」はやむを得ないのではという論調。もう一つの寄附講座は,いまいちよく分からないのだが,竹之下氏や紺野先生ではなく,事務局の対応を問題にしている。

 

 結局,丁寧に書かれてはいたが,理事長選に関わる疑惑についてはさっぱりで,残念な内容と言わざるを得なかった。

 次号以降,より興味深いネタが出てくることを期待したい。

 

 「財界ふくしま」以外の財界誌は,理事長選の問題をほぼスルーしている。当然食いついていい話題なのに,おかしい。何かあるのだろう。

 

 

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レコード芸術の思い出(1)

 初めて買った「レコード芸術」を読み返している。

 

 初めて買ったのは1988年5月号。

 ぱっと見てすぐ分かるのは本の厚さの違い。分厚い。記事も多いが,広告の量が全然違う。例えばグラモフォンだけで8ページあった。今のユニバーサル系のレーベルだと,デッカ(当時はロンドン)は6ページ,フィリップス(オルフェオ,テラークを含む)は7ページあった。今はユニバーサル全体で2ページしかない。ほかのレーベルも同様。

 レコード会社だけでなく,地方のレコード店の広告もたくさん載っていた。今はほぼ無くなってしまった。

 これらの広告料がこの雑誌をかなり支えていたことが分かる。

 

 今回は記事一つ一つは取り上げないが,読者層の移り変わりが分かるものを挙げる。

 読者投書箱の4人の投稿者のうち,1人目は20歳の学生,2人目は22歳の学生,3人目は24歳のアルバイト,4人目は57歳の会社役員だった。何と1人目の20歳の学生は,今はレコ芸のメインライターの1人と言ってもいい増田良介氏だった。「ショスタコーヴィチの「賭博師」」と題して投稿されていた。

 今はなき「レコード相談室」のコーナーも,10人の質問者のうち最年少は14歳で,17歳が3人もいた。

 今では考えられないことだ。

 

 内容も分厚かった。

 一つ一つの記事が充実していて,今読んでも十分読み応えがある。その一方で,「名曲への旅」のように初心者でも楽しんで読める(クラシック音楽の世界に入っていける)連載も充実していた。海外の最新事情についての記事も多く,オーケストラやその指揮者の動向や見通しなど,今何が起きているのかがよく分かった。それに対して,最近はメジャーなオーケストラや歌劇場の常任指揮者や音楽監督が誰なのかもよく分からない状況になってしまっている。

 懐かしかったのは,音盤の紹介ではこの頃はまだCD化されていない名盤がたくさんあって,LPの番号が書かれていたり,廃盤マークの付いたものが多かったこと。カラヤンなどはまだ新譜がどんどん出ていたので,旧録音のCD化は遅れていたのだ。早くCD化されないものかと,首を長くして待っていたことを思い出す。

 

 こうしたことの変化が積み重なって,休刊につながっていったのだろう。

 

 この頃は,毎号ワクワクしながら読んでいた。本の厚さは気にならなかった。だが,いつからか,1冊読み通すのがしんどいなと感じることが多くなっていた…。

 

 

坂本龍一さん死去

 坂本龍一さんが2023年3月28日にがんで死去していたことが,4月2日に報じられた。

 長くがんと闘病中だったことは知られていたのでそれほどは驚かなかったが,それでも,今年に入ってから「関ジャム完全燃SHOW」や「題名のない音楽会」にコメントを寄せられたりしていたし,新しいアルバム『12』も発売されたので,そんなに早く亡くなるとは思っていなかった。

 1月に高橋幸宏さんが亡くなったばかりで,その時の扱いと比べるとメディアでの取り上げ方は大きく違い,さすが「世界の坂本」だと思った(アーティストとしては幸宏さんの方が好きだったので,複雑だったが)。

 

 YMOのメンバーの中では,坂本さんは一番苦手だった。というか,怖かった。

 それは,最初に見たYMOの番組が,1983年12月31日にNHKで放送された「YMOスペシャル」で,その時の印象が強烈に残っていたからだ。

 この番組では,散開コンサートの合間にメンバーそれぞれのミニコーナーがあって,得体の知れない面白いおじさんの細野晴臣伊武雅刀との掛け合いが最高),おしゃれで一番まともに見える高橋幸宏に対して,坂本さんはデヴィッド・ボウイ樋口可南子それぞれとの対談という面白くないものだった。しかも,どちらも暗いところで難しい話を難しい顔でしており,何を言っているのかさっぱり分からなかった。樋口可南子とは最後に爆笑して終わるのだが,それも何が面白いのか全然分からず,かえって怖さが増幅するだけだった。散開コンサートの映像でも,一人だけ化粧をしていて,それも怖かった。

 

 そんな坂本さんは,「世界の坂本」として,特に「作曲家」として高名なわけだが,それでは「彼の代表曲は?」と聞かれても,あまり思い浮かばない。自分は知っていても,一般に知られているだろうと思われる曲を挙げようとすると,「Merry Christmas Mr.Lawrence」と「energy flow」くらいしか思い浮かばないのだ。ネットでも話題になったように,テレビの追悼コーナーで幸宏さんの「RYDEEN」がかけられてしまうのも,それが理由なのだろう。

 いくら「BEHIND THE MASK」が多くの有名ミュージシャンにカバーされたといっても,日本では曲自体はそれほど知られていないと思う。YMOの曲では「TECHNOPOLIS」が一番知られているかと思うが,最近はあまり聴かない。

 映画「ラストエンペラー」でアカデミー賞作曲賞を取ったといっても,「ラストエンペラー」の音楽を知っている人はどれだけいるだろうか。

 近年では,作曲家としてよりも,社会活動や教育活動での方が知られるようになっていたと思う。それは,テレビでの取り上げられ方を見ても明らかだ。どの番組を見ても,作曲家としての業績よりも社会活動の話題の方がはるかに多く時間が取られていた。

 これは,これだけ有名な作曲家なのに,非常に注目すべきことだ。

 

 その答えが,片山杜秀さんの本の中にあった。

 10年以上前の2010年に,片山さんがMUSIC BIRDの番組「片山杜秀パンドラの箱」第1回で取り上げたのが坂本龍一だった。「坂本龍一井上ひさし」と題したこのときの放送は,その後書籍化され,アルテスパブリッシングから「片山杜秀の本6 ラジオ・カタヤマ【予兆篇】 現代政治と現代音楽」として出ている。

 その中で片山さんは,この頃初演された坂本さんの「箏とオーケスラのための協奏曲」を取り上げながら坂本さんの音楽について語っている。

 まず,「坂本龍一は日本を代表する著名な作曲家として誰でも知っている人ですが、誰でも知っているメロディをたくさん作っているかというと、ややネガティブな言い方になるかもしれませんが、そんなにたくさんはないと、少なくとも私の印象では思います。誰でも知っているような曲をそんなにたくさん書いていないのにもかかわらず、日本を代表する作曲家・音楽家として誰でも知っているいちばん有名な人になっているというところに、坂本龍一という人の不思議があるといえると思います」と,実は曲をあまり知られていないことをズバリ指摘し,さらに「ポスト・モダンだとかなんとかいっても、やっぱりわれわれは芸術家にいつの時代でも個性的な表現というものを求めがちです。でも、坂本龍一の場合はそうではなく、「教授」というあだ名にすでに表れているように、ある種の感性的な個性よりも、理性や説明能力のほうに、あるいは処理能力のほうに秀でたキャラクターだということになります」と続け,「坂本龍一というタレントは、「無個性な音楽の作り手」としての個性を表している」,「いままでの、個性的な表現がどうしたとか、タレントがどうしたとかという視点から音楽や作品や芸術を批評する態度とはまったく違う場所に、坂本龍一は行っちゃってるんだなと感じました」とまとめている。

 10年以上前の論評だが,亡くなった今でも,全くそのとおりだと思う。さすが片山さんであり,亡くなった後のメディアでの報道や解説でも,このような指摘はなかったのではないか(全てに目を通したわけではないのはもちろんだが)。ここで引用したのは片山さんの坂本龍一論のごく一部なので,坂本龍一さんに関心のある方は是非全文を読んでほしい。

 なので,坂本さんが亡くなった今,改めて片山さんの坂本龍一論を聞きたいところである(探したところでは,見当たらなかった)。

 

 ということで,残念ながら,坂本龍一さんは,作曲家としてよりも,別な側面で語り継がれていく可能性が高いのではないかと思っている。

 最新作『12』も,その前の『async』も,坂本さんの代表作として広く聴かれるアルバムとはならないだろう。自分の音楽生活のどこかに常に坂本さんがいたと思うと,複雑な気持ちになる。

 

 

 

「レコード芸術」休刊

 「レコード芸術」が2023年7月号(6月20日発売)で休刊するという。

 考えてもいないことだった。

 部数が減っているらしいことは感じていた。値上がりしても逆にページは減り,広告も少なくなっていた。何とか頑張ってほしいと思い,このブログでも厳しいことを言ってきた。新たな読者の獲得が難しいような内容になってきているのではと危惧していた。レコ芸だけではないが,前置きや言い訳のような文章を長々と書かないと始まらない文章が多くなり,読んでいてすっきりしない記事が多くなってきていた。その一方で,初心者が入ってきやすいコーナーが少なくなってきていた。

 2023年4月号の特集「神盤再聴」は,蛸壷化してきて敷居が高くなったレコ芸が原点回帰し,幅広い読者に愛される雑誌を目指して変わろうともがいている姿のようにも見え,肯定的に思っていた(内容は,筆者によって玉石混交だったが)。

 そんな中での休刊発表だったので,余計ショックだ。

 

 これまで,クラシック音楽を聴くようになってから約35年間,1号も休むことなく購読してきた。クラシック音楽に関する知識の大部分はレコ芸からのものと言っていい。そういう読者は多いはずだ。だからこそ,より初心者にも開かれた雑誌になり,読者を増やしてほしいと願っていた。

 

 早速,レコ芸に寄稿している評論家や音楽家の方々の反応が報じられている。朝日新聞では,長木誠司さんが「『レコ芸』は、レコードを中心に発展してきた20世紀の音楽文化の根っこを支え続けた雑誌。もしなくなれば、日本のクラシック音楽文化の重要な核のひとつが確実に壊れる。影響は深刻」とのコメントを,読売新聞では,沼野雄司さんが「クラシック音楽を愛好する人にとって最も信頼し得る媒体であり、70年以上にわたって我が国の音楽文化を支えてきた存在」であって「この雑誌が消滅したら、2023年は日本の音楽文化の核のひとつが崩壊した年として、後世に記憶されるだろう」と,オンライン署名を始めたことを紹介している。

 全くそのとおりだ。

 ネットで様々な情報が溢れているとはいえ,最も信頼できる媒体として存在し続けているのがレコ芸であることは,言うまでもない。これがなくなるということは,日本からクラシック音楽を支える重大な柱がなくなるということにほかならない。

 

 沼野雄司氏,舩木篤也氏,矢澤孝樹氏が名を連ねて始めたオンライン署名は,これを書いている時点で1,300人を超えたところだ。

 そして,レコ芸の主要なライターでもある相場ひろ氏,飯田有抄氏がコメントを寄せている。彼等の意見には完全に同意する。

 現在連載中のコーナーの中では,舩木篤也氏の「コントラプンクテ」と沼野雄司氏の「トーキョー・シンコペーション」は特に優れたものだ。長木誠司氏の「ディスク遊歩人」も大好きだ。これらを読んでは,まだまだ可能性はあると思っていた。

 読者の高齢化も著しいのだろう。投書箱やプレゼント当選者,リーダーズ・チョイスを見ると,それがよく分かる。年配の方,同じ方ばかりだ。

 何とか若い新規の読者を獲得しないといけない。このところ,ずっとそう思っていた。

 何とか休刊を撤回し,再出発してほしい。

 レコ芸なくして音楽之友社は存在しうるのか。

 

 

福島県立医科大学の次期理事長予定者選考について(その7)

 本日(2023年3月30日),竹之下誠一氏が福島県知事から正式に次期理事長に任命されたらしい。

 

【追記】

 ついに竹之下氏が次期理事長に正式に任命されてしまった。

 黒田先生を始めとする方々の様々な動きは,今回の理事長選に関しては全て無視され,実を結ばなかった。県や医大に提出されたとされる要望書や署名に対しては,何も回答はなかったようだ。

 以下の通り,今後理事長選考方法を見直すといった報道もあるが,次の理事長選に竹之下氏は立候補できない。しかも3年後だ。竹之下氏としては,これから理事長として理事長選の見直しを行えば,自分の手柄になる。

 報道は既に下火になっている。このまま表面的には何もなかったかのようになり,医大内部で反竹之下派の粛正が始まるのか,それとも新たな疑惑が出てくるのか。

 

 新聞報道によると,3月30日にあった動きは次のとおりだ。

・県庁で竹之下氏への辞令交付式が行われ,内堀知事から辞令が手渡された。

医大が新年度,理事長選考方法の見直しに着手し,選考過程の透明性を担保できる仕組みなどを検討する。外部の意見も取り入れて見直す方向で,委員会などの設置を想定している。竹之下理事長が見直しを指示した

・選考会議議長の挾間章博副理事長が記者会見し,震災と原発事故後の変化,新型コロナウイルス対応,カリキュラムの大きな変更,福島国際研究教育機構参画など大学が大きく変革する中で強いリーダーシップを発揮したことが評価されて竹之下氏が選ばれたと説明した。意向投票については「規定上候補者を3人以内に絞り込むためのものだが,学内の理解が十分ではなかった」と釈明した。また,理事長の選考方法については教職員らの意見を汲み上げる仕組みなども考慮する考えを示した。

・挾間選考会議議長が,竹之下氏の選考理由を教職員や学生にメールで伝えた。

 

 以上の通り,大学も挾間議長も県も,今回の理事長選考方法に問題があったとは認めておらず,今後の課題しているにすぎない。見直しと言っても,竹之下氏の指示の元に行われるものであり,教職員や県民が納得できる方法になるという保証はどこにもない。既に報道もされている様々な疑惑については,一切語られていない。

 挾間議長の言うような理由が通るならば,現職の再選以外あり得ないことになってしまう。こんな理由で教職員や学生が納得するとは思えない。

 新聞各紙も,当日の動きの事実を伝えるだけで,今回の理事長選考方法の妥当性・正当性や様々な疑惑については触れていない。これで幕引きしようとしているのか。

 結局,なぜ竹之下氏が意向投票で惨敗したのかは,未だ明らかでない

 

 

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福島県立医科大学の次期理事長予定者選考について(その6)

 例のオンライン署名を行っていた方が,3月9日に県知事に対して公開質問状を郵送したとのこと。

 Twitterchange.orgにこの公開質問状の全文が掲載されているので,読んでみた。

 いろいろ書いてあるが,質問状の宛先は「福島県知事 内堀雅雄」であり,差出人(質問者)は「福島県立医科大学の理事長選を考える県民有志の会」となっている。郵送で送って回答を求めているので,代表者の住所・氏名は県に通知されているのだろう(役所は,普通,相手の分からない文書に回答はしないので)。そして,これが全くの謎なのだが,オンライン署名のことは公開質問状には何も書かれていない。3月10日の福島民報の記事では1,649人分の署名を提出した,とあるので,そうなのだろうが,オンライン署名のホームページには,署名を県に提出したとは書いていない。署名した方には,個別に連絡がされているのだろうか。

 

 公開質問状に記載されている「質問」は次のとおりである。

① 下記「3 経緯」および「4 当方の見解」の内容をご確認いただいた上で、本件福島県立医科大学の理事長選考手続について、正当と考えますか。

② 上記2(2)①の回答について、もし「正当」と考える場合には、その合理的根拠を教えてください。

③ 今回の理事長選選考会議の構成員は誰ですか。

④ 選考会議の結果、竹之下誠一氏が選出された理由は何ですか。6年間も理事長を継続したことによる長年の功績があること以外の理由と、意向投票のダブルスコアの結果を覆すほどの理由は何でしょうか。

⑤ 「竹石恭知氏(注:現附属病院長で循環器内科の教授)を含む計2名の選考会議の構成員が竹之下氏への投票を意向投票有資格者に促すように選挙活動をおこなっていた」という情報提供を受けていますが、これは事実ですか。

⑦ 理事長選考会議の議事録の開示は可能ですか。

 

 この質問を見て,非常にがっかりした

 ③~⑦は,医大に聞くべきことであって,県知事が分かることではないからだ。①と②は,既に知事が記者会見で見解を述べている。

 これでは,この公開質問状は無視されてしまうだろう。こんなことでは,オンライン署名した方たちの思いは無にされてしまう。発起人の責任は重大だ。こんなことでは,教職員の意向を無視して進めている選考会議と大学当局を非難できないではないか。

 同じ文書を医大の理事長に送るかTwitterでアンケートを行い,送ることにはしたようだが,そんなことをやっていること自体が頓珍漢だ。誰か,きちんとしたブレーンがついてあげないと。

 

 公開質問状の中では,「3 経緯」の中で,2月13日に紺野氏の推薦人の一部から申立書が福島県監査委員会と福島県総務課文書法務部へ送付された,とあるが,どちらもそのような組織は福島県庁には存在しないようだ。申立書の内容も不明だが,一体,何をしたかったのだろう。

 

 はっきり言うが,こんなことをしていては,竹之下理事長と大学当局の思う壺だ

 

 

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福島県立医科大学の次期理事長予定者選考について(その5)

 昨日(2023年2月27日)の福島県議会2月定例会本会議の追加代表質問で,共産党の宮本しづえ議員が福島県立医科大学の理事長選考に関して質問をした

 今日(2月28日)の毎日新聞福島版でそのことが取り上げられている。記事によると,宮本議員が「選考過程の透明性の確保や今後の制度の見直しを大学に求めるべきでは」,「『しっかりとした透明性の確保が必要だ』ぐらいは答弁してもよいのでは」などとただしたのに対して,内堀知事は(部長ではなく,知事本人が答弁したようだ)「公立大は地方独立行政法人法で自主性・自律性が尊重されており、選考は関係法令や大学規程に基づき大学が対応するもの」,「今後の制度の在り方についても大学が対応するもの」と述べ,選考プロセスに口を挟まない姿勢を示したという。

 「知事が任命する」とされていることをどう考えているのだろうか天皇と同じだとでも思っているのか。大学の自治を理由に不干渉を貫くのであれば,大学の自治が機能するようにするのも知事の責務ではないか。医大はいわば県の子会社なのだから。

 さらに,毎日新聞によると,黒田教授らによる内堀知事への文書については,賛同者が23人に増えているそうだが,県から回答はないのだという。

 そして,県は医大に毎年100億円超の運営費交付金を交付しているという。その原資は,税金である。

 

 宮本議員のこの質問を記事にしたのは,毎日新聞だけのようだ。地元2紙は,例によってスルーしている

 

 福島県議会ではYouTubeで本会議の様子を公開しており,この日の質問も,これを書いている時点で,宮本議員の前に質問した議員の動画は昨日のうちに既にアップされているのだが,宮本議員の質問と知事の答弁はまだ配信されていない。公開が遅れているのには何か訳があるのだろうか。

 

 

【追記】

 宮本議員の質問はなぜかいまだに(3月2日現在)YouTubeにアップされていない。同じ日に質問した佐久間議員の動画も消えてしまっている。

 

 理事長選とは関係ないが,附属病院で医療事故が発生したホームページでひっそりと告知されている。どんな疾患でどんな手術が行われたのか,何科でのことなのかも書いていないので,どうもよく分からない。患者は10歳未満で,術後に起きた医療事故であり,複数の診療科が関わっているということなので,小児外科ほかの診療科が関わっているということだろうか。

 

 

【追記】

 宮本議員の質問と内堀知事の答弁はいまだ(3月4日現在)アップされていないが,3月2日の紺野長人議員の一般質問で,この件について触れられていた。

 福島県議会の公式YouTubeの6分33秒頃からの映像であるが,「県内の医師不足解消に向けた修学資金制度の在り方について」という質問の中で,「県立医大の県外からの志願者が県内を上回ったとの報道もあり、県内の医療機関で働くメリットや魅力をどう高めるかが問われています。そんな中、理事長選出をめぐる問題が引き金となり、大学の影響を受けない県外の医療機関に移ろうと考える医師が増えているとの報告もあり、医師不足は更に深刻化しかねない状況にあります。ある整形外科の専門医は、今回の問題の渦中で、大学と関係のない県外の病院に移りたい、しかし、自分を頼っている多くの患者さんを放り出せないと苦しい胸の内を話してくれました。」と述べている。

 紺野議員は,このほかにも,医大の看護師や県職員が不足していること,県立高校の統合の問題など,共産党かというくらい厳しい質問をしている。

 理事長の任命がいつになるのか分からないが,このままだと何事もなかったかのように竹之下氏の3期目がスタートすることになってしまいそうだ。

 内堀知事には,何としても竹之下氏を理事長にしたい理由があるのだろうか

 

 

【追記】

 「財界ふくしま」4月号で「福島医大理事長・学長選出の収まらない余波」と題してこの件が取り上げられている。

 やはり,残念ながら,理事長選出方法の問題点を書き並べるだけで,なぜ竹之下理事長が惨敗したのか,すなわち医大内部で何が起きているのか,という本質的なことには全く触れていない

 次号でも引き続き取り上げるようではある。

 

 また,「月刊タクティクス」3月号でも「今回の予備選挙の反省を今後の医大運営に生かして欲しい!! 大差がつき過ぎた理事長予備選挙」と題して取り上げているが,内容は確認していない。

 

 

【追記】

 「財界ふくしま」4月号の詳細が分かった。

 黒田教授らの有志の会が内堀知事に提出した提出した文書の全文が掲載されているほか,これまで新聞等では明らかになっていなかったことも書かれている。

 有志の会の文書はここでは転載しないが,ぜひ有志の会で公開してほしい。

 ここでは,新たに分かったことのいくつかを挙げておく。

◎意向投票の投票率は85.7%であり,前回63.3%,前々回72.3%を大きく上回った。教職員の関心が高かったことが分かる。

◎黒田教授は意向投票管理委員会の副会長であった。

◎選考会議後の教授会で,選考会議の議長を務めた挾間章博副理事長が,「今回の選考は本学の名誉を守るために行ったものです」との趣旨の発言をしたと議事録に載った。

 注)「本学の名誉を守るため」の意味は不明

◎財界ふくしまが挾間議長に取材を申し込んだが,事務局を通して「応じられない」と断られた。

◎財界ふくしまが事務局に取材したところ,事務局次長が「これまで選考理由については,公表してきておりませんが,選考結果については公示するということになっています。これまでも公表してきておりませんので,今回も公表しないという形で整理させて頂いたということです。定款並びに選考規程には(公表しないとの)具体的な記述はありません」と話した。

◎同じく,事務局次長は「大学としては,選考会議の結果に基づいて申し出を行ったのですが,そこに重大な瑕疵があった場合,任命権者は知事でありますので知事がそういった(待ったをかける)場合もあるんだろうと思います。ただ,今回が重大な瑕疵に当たるかどうかというところは,私どもは申し出をした側ですので知事の判断になると思います」との考えも示した。

◎選考会議の委員6人は,経営審議会から挾間副理事長,竹石理事(附属病院長),外部委員の前原白河厚生病院名誉院長の3人,教育研究審議会から大戸総括副学長,藤森医学部長,坂本看護学部長の3人であった。

◎財界ふくしまは,選考会議の採決は4対2で,現職の竹之下理事長が選出されたともいわれている,としている。

◎今回の選考委員の中で学長(理事長)の指名でなかったのは,藤森医学部長と坂本看護学部長の2人であった。財界ふくしまは,この2人が採決で反対したのだろうと見ているようである。

◎有志の会が併せて提出した要望書「理事長選考の違法性について」は,東京の花園法律事務所の一色奈保弁護士が作成した。

◎取材に対し事務局次長は,今後理事長選考に関する「規程を改正する方向に向かうのか,向かわないのかを判断するのは選考会議になります」と語った。

 

 

【追記】

 今日(2023年3月10日)の福島民報に,「福医大理事長選 選考過程説明求め県に1649人分の署名」と題してこの件の記事が出た。

 福島民報は理事長選の問題についてだんまりを決め込んでいたので,ようやくの記事だ。しかし,具体的な問題点については何も触れておらず,「一応報道しました」というアリバイづくりに見える。

 記事の内容は,県内の医療関係者が代表を務める「福島県立医科大学の理事長選を考える県民有志の会」が3月9日に,選考過程の詳細な説明を求めるオンライン署名1649人分を県に提出した,というもの。選考の正当性や竹之下氏が選出された理由などの回答を求める質問状も送付したという。

 これはもちろん,福島民友新聞が2月14日に報じたオンライン署名と同じものだろう。しかし,2月14日の記事では,署名を提出したのは「福島県立医科大学の理事長選について考える会」とされていた。オンライン署名のホームページでは,発信者は「福島県立医科大学の理事長選挙を考える県民有志」となっている。同じ人がやっていることだろうが,こういうところがデタラメだと,県には相手にされなくなる可能性が高くなるので,ちゃんとした方がいい。また,以前も書いたが,名前を明かさないと相手にされない可能性は更に高まる。もはや,このオンライン署名も,何をしたいのかよく分からなくなっているように思う。署名の数の伸びも鈍っていて,あまり増えていない。確かに,福島民友の記事では「中間報告」として提出したと書いてあるが。

 それにしても,福島民報の記事は中途半端だ。地元紙としての責任を果たそうという気概は全く感じられない。

 

 話は変わるが,岡山大学医学部が揉めている。ここで登場しているシーメンスヘルスケア社だが,福島県医大財務諸表を見たところ,「Ⅶ.重要な債務負担行為」のところに,シーメンスヘルスケア・ダイアグノスティクス社と「検査部検体検査新体制構築事業に関するパートナーシップ契約」なるものを24億7,500万円もの金額で締結していることが分かった。この契約は,令和元年度から始まっており,令和3年度の財務諸表では,年額1億6,500万円にもなっており,それから計算すると,15年を超える契約になるようだ。

 どんな契約なのか,名前だけからはよく分からないので,引き続き調べたいが,15年契約というのは穏やかでない感じがする。もっとも,岡山大学の30年で約240億円というのには全然及ばないのではあるが。

 

 

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福島県立医科大学の次期理事長予定者選考について(その4)

 2023年2月21日の朝日新聞夕刊に「結果ありき? 理事長選に不信」と題して記事が掲載された。

 前回(2月11日)の朝日新聞の記事は地方版だったので,今度は夕刊とはいえ全国紙での掲載となり,ネット版(有料記事)でも配信されている。

 内容は,2月11日の記事の焼き直しで,ほぼ同じ。目新しい情報としては,「選考会議の決定が、投票結果の発表からわずか1時間後だったことも「結果ありきの選考」との憶測を呼んだ」と書かれていることくらいだろうか。

 

 ここでもやはり,選考過程が不透明であり教職員の意向が反映されていないということを指摘するのみで,なぜ竹之下氏が惨敗したのかについての分析は全くない

 新人同士の争いならいざ知らず,2期務めた現職が大敗したということは,この間の竹之下理事長の大学運営に問題があったと教職員の多くが考えているということに他ならない。それが何なのかを取材して伝えるのがマスコミの使命だろう。福島県の医療を支える公立大学なのだから。多額の税金も運営交付金として交付されている。

 まずは,竹之下理事長の2期の総括が必要だ。

 選考方法に問題があることは,規程を読めば分かることであり,その責任は国や県にもある。定款を最終的に認可するのは文部科学大臣なのだ。しかしやはり,福島県立医科大学としての問題の本質は,そこにはない。竹之下氏が2期の間に何をし,何をしなかったのかが問われているのだ。

 

 相変わらず,意向投票の当事者たちは沈黙したまま。竹之下氏としては,もう県に申出書が提出されており,知事は大学の意向を尊重する方針を明らかにしているので,余計なことを言って問題を大きくしたくないのだろう。4月までには正式に任命されるし,任命されてしまえば,好きに反対派を粛清できると考えているのだろう。

 

 オンライン署名は1,500人を超えたようだが,いまだにいつ・誰に・どんな形で署名を提出したのかやそれに対する反応は明らかになっていない。既に署名が各方面に提出されたと新聞でも報道されているというのに,当該ホームページ上で何の告知もされていないというのは,不審だ。

 まさか,竹之下氏側による反対派のあぶり出しのための釣りだったなんていう落ちはあるまいが,このままだと尻すぼみになって,何事もなかったかのように4月を迎えることになるのではないか。それでいいのか。

 

 

【追記】

 整形外科医の田地野崇宏医師がTwitterで,選考会議の議長が「狭間氏」であると明らかにしている。おそらく,副理事長で細胞統合生理学講座主任教授の挾間章博氏のことと思われる。この情報が正しいかは分からないが,もしそうだとすると,副理事長は理事長が任命するので,中立な立場で選考会議が開かれたとは考えがたい

 また,このツイートでは,「紺野候補の推薦人から、1月16日に選考会議議長狭間氏に情報開示請求が行われましたが、開示・不開示決定が通知されていないそうです。条例では30日以内に限り延長可とありますが、この延長期間もとっくに過ぎています」と書かれているが,医大に対しての情報公開請求であれば,理事長宛に所定の様式で行う必要がある。もし狭間氏宛に文書を送ったとしても,無視されてしまうだけだろう。

 別な方がTwitterで,医大に「理事長選考に関わる情報及び選考会議に関わる情報」の開示請求を行い,既に開示の決定を受けていることを明らかにしている。写しの交付はこれからのようであるが,このツイートを見ると,選考会議がいつ行われたかということも分かっているようだ。それによると,理事長候補者が決定されたのは1月13日の第4回理事長選考会議ということになるらしい。第1回から第4回までの開催年月日を知っていること,併せて経営審議会と教育研究審議会の日程まで把握しているということは,医大の中枢部にコネのある方のようだ。続報を期待したい。

 

 

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福島県立医科大学の次期理事長予定者選考について(その3)

 今日(2023年2月11日)の朝日新聞福島版に「県立医大 理事長選考で混乱」と題して記事が掲載された

 これまで朝日新聞は知らんぷりだったので,いよいよ無視できなくなったようだ。

 

 まず,(その2)でも取り上げた「医大理事長選考を憂慮する有志の会」による「福島県立医科大学理事長選考の違法性について」という文書について書かれている。この文書の写真(一部)も掲載されているが,全文は載せていない。

 毎日新聞の記事では,黒田直人法医学講座主任教授をはじめとする12人の教授が送ったとしていたが,今日の朝日新聞では,15人の教授が知事,副知事,全県会議員に出したとしている。有志の会のメンバーが増えたということだろうか。

 朝日新聞は,大学関係者によると「選考会議の複数の委員が意向投票に際し、電話で竹之下氏への投票を依頼するなどしていたことも発覚」したとしている。さらに,意見書には弁護士の意見として「一般法人法に従えば、意向投票の際に理事長候補者の応援をした委員が選考会議で賛否を表明することはできず、よって今回の会議のメンバーによる選考は無効」との見解が示されていたという(一般社団法人法では,代表理事は理事会が選定すると定めているのみなので,この見解の根拠は確認できず)。

 朝日新聞の取材に対し,医大は「意向投票(選挙ではなく法的拘束力はない)を行った後に、選考会議で理事長予定者が選考される規定となっている。選考会議の結果、次期理事長にふさわしいとして、竹之下氏が選ばれた」と回答したという。

 朝日新聞は,2004年以降,大学のあり方が大きく変わり,さらに,2014年の国立大学法人法と学校教育法の改正で学長の権限が強化され,教授会の力が弱まったことなどが背景にあるとしている。京都大学の大河内泰樹教授のコメントも掲載しており,大学で民主的なチェックが働かなくなっていることを指摘し,選考会議のメンバーさえ明らかにされていないことから説明責任が果たされていると言えるのかと疑問を呈している。

 詳しくは記事を読んでほしい。

 

 ただ,やはり,残念なことに,朝日新聞の記事では,ある教授の話として「意向投票の結果は現体制に対する不満の表れだ」とのコメントを載せるのみで,「現体制に対する不満」というのが具体的に何なのかについては何も書いていない。なぜそれを聞かないのだろうか。聞いたが書けないのか。竹之下氏に忖度したと疑われても仕方ないと思う。それを取材して報道しないと,上氏などが言うように,単なる権力闘争としか見られなくなってしまう

 医大の関係者も,現体制に問題があるならば,具体的な問題点を指摘して声を上げてほしいと思う。報復を恐れて難しいのだろうとは思うが。マスコミは,学内の声を丁寧に拾い上げて報道してほしい。

 単なる権力闘争なら,負けた紺野教授側が何も言わないのはおかしい。それは,アメリカ大統領選挙を見ても分かるだろう。学内から声が上がっているということは,単なる権力闘争ではなく,何かがある,ということだろう。

 今朝の新聞(福島民報福島民友新聞)では,医大の齋野和則事務局長が退職との報道もされていた。選考会議の運営をはじめとする理事長選考に関しては,事務局が関わっていると思われる。齋野氏は学内で何が起きているのか,一番分かる立場にいるはずだ。元々県職員であり,竹之下氏とも紺野教授とも直接の利害関係はないはずだ。齋野氏は,もう辞めるのであれば,黒田教授のように声を上げてほしい。

 

 

【追記】

 2月14日の福島民友新聞に,オンライン署名が医大などに提出されたことの記事が掲載された

 「理事長選考説明を求める」と題して,「県内の医療関係者が代表を務める「福島県立医科大学の理事長選について考える会」は13日までに、同大などに選考過程の詳細な説明を求める署名を提出した」と報じている。さらに「署名は同会の代表を務める「福島の医師」を名乗る発起人が「福島県立医科大学の理事長選考の不公平について」と題してオンラインで実施した。今月4日時点で1200人を超えた署名を中間報告として提出した」としている。

 これを書いている時点では,オンライン署名は1,400人を超えているが,伸び悩んでいる印象を受ける。「福島の医師」が誰なのかは,いまだ明らかでない。署名を提出したのなら,そろそろ名を明かしてもいいのではないか。こういうのは,匿名のままだとなかなか盛り上がらないと思う。そして疑問なのは,change.orgのオンライン署名のページには,署名を提出したとは書いていないことだ。署名を集めたのだから,どのような要望書をいつ誰に提出し,どのような反応があったのか,記載すべきだ。署名した人には個別に連絡が行っているのだろうか。署名した人の名前は,署名した直後はサイトに載せられる。リスクを冒してまで署名した医大の教職員の方もいるだろう。署名した人が裏切られたと感じないように,丁寧にフォローしないといけないし,そうしないと今後も署名の数は伸びないだろう。

 福島民友は,署名が提出されたという事実を坦々と伝えるだけで,毎日新聞朝日新聞のように理事長選の問題点を指摘することはしていない。新聞社としてのスタンスが分からない。福島民報との差別化を狙うなら,もっと踏み込んだ報道をする必要がある。ここまで知らぬ存ぜぬを通している福島民報が踏み込んだ記事を書くとは思えない。福島民友には,地元紙として,先行して報道する全国紙にはない情報源を駆使して,より充実した記事を載せてほしい。

 また,13日からは県議会が開会した。共産党はこの件について何か質問するのだろうか。質問しても,新聞は無視するだろうか。注目していきたい。

 

 

【追記】

 福島県医大の整形外科にいた田地野崇宏医師(現在は脳神経疾患研究所理事長特別補佐兼南東北福島病院執行本部長COO. 福島県立医科大学整形外科学講座臨床教授)がTwitterで,医大の学内の掲示板に竹之下理事長の退陣を求めるビラが貼られていることを紹介している。

 今回の騒動は,竹之下派と前理事長の菊地臣一氏(故人)の一派との対立との見方もあるようだが,それだけでこれほどの大差がつくとは思えない。

 そもそも,竹之下氏を後継者にしたのは菊地前理事長のはずだし,紺野教授は整形外科だが菊地前理事長の弟子ではない(自治医大出身)。

 そういえば,菊地前理事長は腰痛の世界的権威であり,医療関係者でそのことを知らない人はいないほどの方であったが,竹之下氏の医師としての業績は聞いたことがない。そもそも何が専門だったのかも分からなかったので調べると,消化器外科が専門らしい。「シーボルト・メダル賞」という賞を受賞しているということだが,インターネットで調べてもどんな賞か分からなかった。「ジーボルト賞」というドイツ政府が設立した権威ある賞とは違うようだ。ここで紹介されている「たった一名」というのは,竹之下氏のことだろうか。

 

 

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福島県立医科大学の次期理事長予定者選考について(その2)

 どうも新たな段階に入ったようなので,項を改める。(→前回はこちら

 

1 医学部教授12人による要望書提出

 本日(2023年2月8日)の毎日新聞によると,福島県医大医学部などの教授12人が,1月31日付けで内堀知事や県議全員に「選挙は無効」として対応を求める要望書を提出したという。

 毎日新聞の記事は有料記事だが,m3.comで無料で読むことができる。

 記事によると,要望書は「理事長選考を憂慮する有志の会」(代表・黒田直人医学部教授)が提出し,「選考理由について適切な説明がされていない」と主張しているという。また,添付した弁護士の意見では「理事長は両審議会の委員の指名・任命を通じ、選考会議の委員選出や理事長候補者の選考に事実上強い影響力を行使できる」などと訴えているという。さらには,同会は選考会議の委員が現職への投票依頼をしたとも主張しているとのこと。

 今のところ,この要望書自体はネット等で公開されていないようだ。

 代表の黒田教授は法医学講座の主任教授をされており,今年度で定年退官される。退官を前に,医大の現状を改めるべく,捨て身の覚悟で代表になられたのだろう。紺野教授もそうだが,退官予定の方でないと声を上げられないような状態になっていることが想像される。

 ちなみに,法医学講座も整形外科学講座も,後任の主任教授はまだ決まっていない。

 同会が選考会議の委員による働き掛けについて要望書に記載しているということは,学内では誰が選考委員か分かっているということだ。これまではマスコミ各社とも選考委員は非公開であるとしか報道していないが,関係者に取材すれば簡単に分かるということで,これはマスコミの怠慢であり,調べて公にすべきだ。

 毎日新聞の記事では,県会議員への取材結果も書かれており,ある県議は「学内で解決策を模索すべき話だろう。興味はない」と話したという。興味がないとは,この県議が誰なのか,知りたいところだ。

 

 

2 m3.comによるアンケート

 m3.comが,「理事長・学長の選考方法、透明性は?」と題して会員アンケートを行い,その結果を公表している。

 843人の医師から回答があり,勤務医の43.6%が選考方法を「不透明だ」とするなどの結果となったという。詳しくは記事を見てほしい。

 

 

3 財界ふくしま

 財界ふくしま2023年3月号で,「福島医大理事長・学長選出の収まらない余波」と題してこの件が取り上げられている。

 目新しい情報はほとんどなく,菊地前理事長の影響力を指摘する関係者の声を紹介しているのが目につく程度。

 

 

 ここまでのところ,マスコミでは毎日新聞の一人勝ちといった様相。地元紙2紙は完全に沈黙している。地元紙としての役割を全く果たしていない

 

 

【追記】

 共産党福島県議団が1月23日に県知事に提出した「2023年度予算と主な施策についての申し入れ」に,本件について記載があることが分かった。

 

県立医科大学理事長学長選出ついて
 県立医科大学理事長兼学長選出については、民主主義にもとるとの声が教員だけでなく広く県民からも上がっていることは、県立大学として由々しき事態である。県立大学として透明性確保の観点から、関係者はもとより県民誰もが納得できる理事長選出となるよう、意向投票の結果を受けた選考会議の議事録を公表し説明責任を果たすとともに、適切な対応を取るよう求めること。

 

 また,ついでにいろいろ見ていたら,2019年11月27日付けの県知事への申し入れに気になる記載があった。

 

四、福島県立医科大学特定業者指名決定に係る疑惑につい
1、福島県立医科大学特定業者指名決定に係る疑惑について、県として調査し適切な対応を行うこと。

 

 何の契約(?)に関するどんな疑惑なのだろう。報道された記憶はないのだが。共産党も,具体的に書かないのは無責任ではないか。その後どうなったのだろう。謎だ。

 

 

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アルツ磐梯と猫魔スキー場がリフトで連結

 今日(2023年2月3日)の新聞に,星野リゾート アルツ磐梯(スキー場)と猫魔スキー場がリフトで連結されることになり,来シーズンから簡単に行き来できることになるとの記事が掲載された。

 スキー・スノーボードファンには,たいへんな朗報だ。

 元々両スキー場を連結するという構想は昔からあったが,バブル崩壊もあって進まずにいたものだ。両スキー場の経営が星野リゾートに移ってからは,いろいろと連携が図られるようになっていて,リフト券が共通になっているほか,既に,歩いて行き来できるようにはなっていた。とはいえ,歩いてとなると,なかなかハードルは高かったのも事実だ。

 ようやく実現にこぎつけた星野リゾートには敬意を表したい。

 

 これにより,国内最大級のスキー場が誕生すると報道されている。

 とはいえ,両スキー場ともいろいろ問題はある。

 アルツの方は,星野リゾートになってから,ゲレンデがかなり縮小してしまっているのだ。旧第3クワッドリフト(1,850m)はだいぶ前に運行を停止し,既に撤去されている。同じエリアの第1高速ペア(1,620m)も動いていない。このエリアの上部は,CATツアー専用エリアとして解放されてはいるが,簡単に滑ることはできない。

 そして,数年前からは,アルツゴンドラ(2,390m)も運行を停止している。ゴンドラはアルツの象徴のような存在だったので,これがないのはとても寂しい。ゴンドラ終点からのロングスキーも楽しめなくなっている。

 これらの影響で,アルツエクスプレス(旧第4クワッドリフト)(1,910m)に客が集中し,非常に混雑する状態になっている。旧猫魔ボウルに行くにはこのリフトに乗るしかないので,集中するに決まっている。

 旧猫魔ボウルも,いくつかのリフトが運行を停止しており,接続が非常に悪くなっている。長い中斜面がなくなり,滑りごたえがなくなってしまった

 

 猫魔スキー場の方も,旧雄国第1B線ロマンスリフト(693m)と丸山クワッドリフト(800m)がなくなっている。猫魔は,上の方のゲレンデは斜度が大きく幅の狭い,上級者向けの滑りにくいコースばかりで,この両リフトがそれを回避できるものだったので,滑りづらくなっている。

 

 今回の両スキー場の連結を機に,運行を停止しているリフト・ゴンドラを復活させて,名実ともに国内最大級のスキー場として生まれ変わってほしい

 

 

 アルツは好きなスキー場で,昔はよく行っていたが,最近はあまり行かなくなってしまった。

 若いスノーボーダーが大多数を占めていて,スキーヤーは滑りづらいところがある。

 また,以前はスパアルツおおるりという日帰り入浴施設があり,広くてとてもいい施設だった。坂内食堂の支店が入っていて,必ずここでラーメンを食べていたのだが,それもなくなって久しい。

 アルツに行くたびに残念に思う。

 

 

Amazon Musicの不具合

 「値上げするなら,まともなサービスを提供しろ!」

 

 Amazon Music Unlimitedの値上げが発表された。Apple Musicが先に値上げしたので,時間の問題だろうとは思っていたが,値段もAppleに合わせてきた。

 そもそもハイレゾまたはロスレスでこれだけの数の曲が聴き放題なら安すぎると思っていたので,このくらいの値上げなら,アーティストに適正に還元されるのなら,やむを得ないと思う。

 しかし,それもサービスの質がきちんとしてれば,だ。

 前に「Amazon MusicAndroid版)が重すぎる件」でも書いたし,その前から何回かAmazon Musicの不具合や問題点については書いた。だが,一向に改善されず,むしろサービスは低下しているとしか言いようがないので,このタイミングでの値上げは許しがたい。

 そもそも,Spotifyと比べても,音質以外は圧倒的に劣っているSpotifyハイレゾ対応するか,AppleWindows版でもハイレゾに対応すれば,Amazonはすぐやめるところだ。

 

 Android版のAmazon Musicが重すぎる,Amazon Musicだけでなく,スマホ自体がほとんど固まってしまう原因の一つと思われるものが分かった。

 どうも,ダウンロードの量が大きくなると重くなるようだ(本体かSDカードかは関係ない)。と言っても,せいぜい1GB程度で重くなるので,これは酷すぎる。直近では,どうしようもなく重くなったので,容量を確認したら9GBほどになっていた。そんなにダウンロードした覚えはないので,そこも謎なのだが。と,これを書いているときにスマホを確認したら,削除して最低限の曲だけダウンロードしたばかりなのに,6GBを超えていた。どういうことなのか,明らかにおかしい。

 しかも,困ったことに,アプリ上でダウンロードした曲を削除しても,アプリの使っているユーザーデータは減らないのである。Androidの設定からユーザーデータを丸っと削除するしかない。これだとアプリをアンインストールするのと違ってログイン情報は記憶されたままなので,IDとパスワードを入れ直す必要はないのだが,アプリの設定はやり直す必要がある。当然,ダウンロードしたものも削除されるので,ダウンロードし直さないといけない。家に光回線を引いている人は別に何と言うことはないだろうが,そうじゃない人はパケット通信料が大変なことになるだろう。

 

 

 さて,繰り返しになるものもあるが,今,特に困っていることを書いておく。

 

① 曲の切り替わりの所で頻繁に固まる。どんどん酷くなっているように思う。外出先で,ダウンロードした曲だけ聴いているときはほとんど発生しないので,もしかすると,ユーザーデータが不自然に増えていることと関係があるかもしれない。ダウンロードしなくても,ストリーミングで聴いているだけで,ユーザーデータがどんどん増えているのだろうか。以前はそんなことはなかったのだが。引き続き調査したい。

 

② シリーズものの一部だけ聴けないものがある。最近聴いたものでは,2022年度のレコード・アカデミー賞にノミネートされた,ソニア・ルインスキーのピアノによる「ヴィラ=ロボス:ピアノ作品全集」(ナクソス)がある。なぜか,第3集だけ1曲しか聴けないのである。Spotifyでは全曲聴けるので,ナクソス側の問題ではないと思われる。こういう中途半端はやめてほしい。

 

③ 以前も指摘した,ユニバーサル系の古い録音で,曲の最後が切れているものがあることについては,いまだに解消されていない。

 

④ 1つのアルバムの中でULTRA HDとHDが混在しているのも,まだ解消されていない。

 

 なお,これらはAmazonにも直接指摘している。しかし,改善される気配はない。

 

 

福島県立医科大学の次期理事長予定者選考について

 福島県立医科大学の次期理事長予定者の選考結果が波紋を呼んでいる。


 今年度末で理事長の任期が満了するため,現職の竹之下誠一氏(71)と副理事で整形外科主任教授の紺野慎一氏(65)が候補者となっていた。複数の理事長候補者による意向投票が行われるのは,福島県医大が法人化された2006年以降初めてだという。
 1月13日に意向投票と選考会議が行われ,役員や助手以上の専任教員らを対象に行われた意向投票では紺野氏492票に対し竹之下氏が268票と惨敗したが,選考会議では意向投票の結果に反し,現職の竹之下氏が選出された。
 選考会議における選考理由は明らかにされていないが,新聞記事(1月14日福島民報)によると,東日本大震災福島第一原発事故発生後の県内医療の再生,新型コロナウイルス感染症対応,病院経営をリードしてきた手腕を評価し,続投の声が上がったとみられるという。誰か大学の関係者が,取材に対してそう答えたのだろう。また,得票数で決める規則はないのだそう。

 

 福島県医大の理事長の任命については,定款第10条に規定があり,
・理事長の任命は,法人の申出に基づき,知事が行う。
・法人の申出は,大学の学長となる法人の理事長を選考するため設置される機関(理事長選考会議)の選考に基づき行う。
・理事長選考会議は,委員6人で組織する合議体とし,理事長選考会議の委員は,経営審議会において選出された者及び教育研究審議会において選出された者の各同数をもって充てる。
・理事長選考会議に議長を置き,委員の互選によってこれを定める。
・理事長選考会議の議事の手続その他理事長選考会議に関し必要な事項は,議長が理事長選考会議に諮って定める。
とされている。
 意向投票については,定款には規定がない。おそらく,何らかの法人の規程に定めがあるのだと思うが,大学のホームページからは確認できなかった。
 今回の選考委員の名前は,明らかにされていないようだ。しかし,経営審議会と教育研究審議会の委員は理事長(=学長)が指名するため,全員現理事長の息のかかった人なわけで,現理事長が立候補する限り,意向投票の結果がどうであれ,それ以外の候補者を選考することはほとんど考えられないということになる。つまり,定款の規定自体に欠陥があると言わざるを得ない。
 さらに,ここが非常に重要だが,新聞記事(1月14日福島民友新聞)によると,理事長の任期は,本来最長で2期6年までのところ,震災,原発事故後10年間に就任した理事長に限り,3期9年までとされているというのだ。つまり,本来であれば,竹之下理事長は今期で退任しなければならなかったのである。ちなみに,前任の菊地理事長も,この規定により3期9年務めている。

 

 選考結果については,SNSでも選考結果がおかしいと波紋を呼んでいる。単におかしいとか,民主主義の否定とかいう意見で,選考方法の問題点の本質的なことを述べているものはないようだ。
 投稿しているのは県内の医者が多いが,こうした人たちは,なぜ圧倒的に強いはずの現職が負けたのか,何か噂で聞いているのではないか。しかし,そういった投稿もないようだ。


 マスコミは,選考会議翌日の1月14日に地元2紙(福島民報福島民友新聞)が報じていたが,結果がおかしいという論調は全くなかった。
 マスコミがきちんと書くべきだ,と思っていたところ,今日(1月22日)の読売新聞地方版に,「県立医大理事長再任 なぜ」と題して,教職員が「選考が不透明」と声を上げはじめていることの記事が掲載されていた。これからさらに広がるだろうか。
 いずれにせよ,我々外部の人間は福島県医大の中がどうなっているのか全然分からないのだから,マスコミがきちんと取材して記事にすべきだ。単なる多選批判なのか,紺野教授待望論が強かったのか,それとも,竹之下理事長に何か重大な問題があるのか

 

 一方,県内で勤務している医師を名乗る人物が,change.orgというサイトで「福島県立医科大学の理事長選出選考の不公平について」と題してオンライン署名を集めている
 提出先は医大か県を検討しているとのことで,「具体的に、福島県立医科大学に対しては選考理由の説明、選考会議メンバーの公表を求めます。福島県知事には、学内民意が蔑ろにされた選出結果が出たことに対してどのように判断するのかを理事長を正式に任命する前にコメントいただいて、可能であれば理事長選のやり直しを福島県立医科大学へ指導することを求めます。」ということだが,どうもポイントがずれているようで,どのくらい集まるかは不透明だ。これを書いている時点では500を超えたようであるが。

 今後は,来年度に向けて知事が任命することになるが,このような事態になっていることへの説明責任が知事にあるのは言うまでもない
 定款の規定でそうなっている以上,竹之下氏を任命するのだろうが,規定がそうなっているからというだけでは済まされない。定款を作ったのは福島県なのだから。
 こうなった元々の原因は,知事が震災の特例で3期まで任期を延ばせるようにしたことにあると思う。その当時の知事が内堀氏だったかどうかは分からないが,少なくとも副知事にはいたはずだ。菊地前理事長については分からないでもないが,その後の理事長まで恩恵を受けるような規定にしたのはなぜなのか。このような問題が起きたのも,身から出た錆としか言いようがない。

 

 

【追記】

 1月23日の毎日新聞朝刊福島版(有料記事)に,「福島県医大理事長選 倍の得票覆り3選「選考過程が不透明」の声」と題して詳しい記事が出ていた。

 前日の読売新聞よりもしっかり書かれていて,手続的な問題点は網羅されている。何が起きて何が問題なのかということは,この記事を読めばほぼ全て理解できるだろう。

 しかしやはり,なぜ圧倒的に有利なはずの現職があのような大敗を喫したのかということについての取材や分析はなく,そこは物足りない。これから更に取材を重ねて,明らかにしてほしい。

 選考過程の問題ももちろん重要だが,なぜ竹之下理事長が教職員による投票で惨敗したのか,福島県医大で今何が起きているのか,を明らかにすることが一番重要なはずだ。

 

 

【追記】

 内堀知事は,1月23日の定例記者会見で本件についてコメントした。毎日新聞によると,「選考は大学が自ら行うもの」「学内の選考会議で次期理事長予定者が選出された。県としては関係法令に従い対応する」と述べたという。

 例によって主体性の全くないコメントである。

 既に大学から県に対し現職の3選が決まった旨の申出書が提出されており,3月下旬に任命するという。

 つまり,本人が辞退するなどして大学から取下げがない限り,県知事としてはそのまま任命するつもりだということだ。

 このまま何もしないで放置して,「関係法令に従い」機械的に任命するつもりなのだろう。竹之下氏に鈴を付けるつもりはないようだ。そのうち騒動は収まると,高をくくっているように見える。さて,どうなるか。

 

 

【追記】

 1月26日の河北新報の朝刊に「福島県医大理事長選 現職再任の選考過程に疑問の声」としてこの件の記事が掲載された。

 一方,地元の福島民報福島民友はいまだこの問題を取り上げていない朝日新聞もなぜか知らぬ存ぜぬである。

 SNSでは,地元財界誌の政経東北が関心を示した。

 オンライン署名は,これを書いている時点で900人を超えたところ。どうも伸び悩んでいるように思う。「福島県立医科大学の理事長選出選考の不公平について」という意味不明でズレたタイトルのせいではないか。タイトルはとても重要だ。

 この問題の本質は,なぜ圧倒的に強いはずの現職理事長が大差で負けたのか,つまり,なぜ福島医大の教職員は竹之下氏にNoを突きつけたのか,ということで,そこを知りたいのだが,新聞もSNSもそのことを問題にしているのは皆無である。このままだと,竹之下氏の問題ではなく,問題ないと発信している福島医大の事務局の問題になってしまう

 

 

【追記】

 医師の上昌広氏がBusiness Journalに「福島県立医科大、医療事故を「問題なし」…いわき市へ医師3名派遣で3億円受領」と題して理事長選に関して記事を書いている。

 内容は,紺野教授の整形外科で起きた医療事故とその対応,さらにいわき市への医師派遣の問題についてである。記事では「K教授」と書いているが,紺野教授のことであることは明らかだ。誰でもちょっと調べればすぐ分かるのに,あえて現時点で「K教授」としているのには何か意味があるのだろうか。

 それはともかく,上氏は,この問題を挙げて,「教職員は、このことを知らないのだろうか。それとも、それを知って,K教授を推したのだろうか」「マスコミも問題だ。彼らは、果たしてちゃんと取材したのだろうか。選考委員にインタビューすれば、背景を解説してくれたはずだ」「双方から言い分を聞けば、今回の人事は教職員の暴走を選考委員が押しとどめたと、誰も考えるだろう」と述べている。

 しかし,そのそも選考委員は明らかにされておらず,インタビューは不可能だ。だいたい,選考委員は全員竹之下氏の息のかかった人たちである。上氏は今回の問題の本質を全く理解していないと思わざるを得ない。今回の意向投票の結果は,紺野教授を選んだというよりも,竹之下氏に「No!」を突き付けたということのはずだからだ。上記記事の内容も,その頃,竹之下氏は紺野教授の上司に当たる立場にいたわけで,知らぬ存ぜぬでは済まされないのだが,そのことは無視している。

 なぜ教職員が竹之下氏に「No!」を突き付けたのかは,近いうちに明らかになるだろう。そのとき上氏はどう反応するのだろうか。

 それにしても,「教職員の暴走」とは,福島医大の教職員に対して失礼極まりない。大学の内情を何も分からない外部の人間が,よくそんなことを言えたものだ。竹之下氏と個人的に何かあるのだろうか。

 

 

【追記】

 福島県議会議員(日本共産党)の宮本しづえ氏のブログに「23日、不透明な福島医大理事長選出について、自由で開かれた福島医大を願い関係者から話を伺いました」と題して本件のことが書かれているのが分かった。

 医大の職員から県議会議員全員に話を聴いてほしいとの要望が出されたので,話を聴いたのだという

 内容は宮本議員のブログを見ていただきたいが,ここでもやはり手続論に終始しており,なぜ教職員が竹之下氏に「No」を突き付けたのかは,何も書いていない医大の関係者は御存知なのだろうが,一般県民はそこが知りたいのだ。上氏が言うように震災後実績を上げてきた現職理事長が大差で負ける,ということ自体が極めて異常なわけで,そこには深い理由があるはずだ。

 県議会議員全員に要望が出されたということは,共産党以外の議員も聴いている可能性がある。少なくとも,医大臨床検査技師出身の紺野長人議員(県民連合)は,内情をよく御存知のはずだ。ということで,紺野議員の公式サイトを見てみたが,何もなかった。紺野議員は既に,今期での引退を表明している。これから2月議会に向けて,何か動きはあるだろうか。注目していきたい。

 

 

【追記】

 福島県医大の学内向け広報誌「FMU NEWS Letter Vol.10」に,竹之下氏が次期理事長予定者に選出されたとの記事が掲載されているのが分かった。

 記事では,「本学は、月13日(金)理事長選考会議を開き、次期理事長予定者として、竹之下誠一現理事長を選出しました。」「任期は2 0 2 3 年4月1日から3年間となります。」と書かれているが,意向投票の結果や県知事が任命することについては一切触れていない。もう任命されたかのような書きぶりだ。これを見た教職員の方たちはどう思っているだろうか。

 

 

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