福島県立医科大学の次期理事長予定者選考について(その3)

 今日(2023年2月11日)の朝日新聞福島版に「県立医大 理事長選考で混乱」と題して記事が掲載された

 これまで朝日新聞は知らんぷりだったので,いよいよ無視できなくなったようだ。

 

 まず,(その2)でも取り上げた「医大理事長選考を憂慮する有志の会」による「福島県立医科大学理事長選考の違法性について」という文書について書かれている。この文書の写真(一部)も掲載されているが,全文は載せていない。

 毎日新聞の記事では,黒田直人法医学講座主任教授をはじめとする12人の教授が送ったとしていたが,今日の朝日新聞では,15人の教授が知事,副知事,全県会議員に出したとしている。有志の会のメンバーが増えたということだろうか。

 朝日新聞は,大学関係者によると「選考会議の複数の委員が意向投票に際し、電話で竹之下氏への投票を依頼するなどしていたことも発覚」したとしている。さらに,意見書には弁護士の意見として「一般法人法に従えば、意向投票の際に理事長候補者の応援をした委員が選考会議で賛否を表明することはできず、よって今回の会議のメンバーによる選考は無効」との見解が示されていたという(一般社団法人法では,代表理事は理事会が選定すると定めているのみなので,この見解の根拠は確認できず)。

 朝日新聞の取材に対し,医大は「意向投票(選挙ではなく法的拘束力はない)を行った後に、選考会議で理事長予定者が選考される規定となっている。選考会議の結果、次期理事長にふさわしいとして、竹之下氏が選ばれた」と回答したという。

 朝日新聞は,2004年以降,大学のあり方が大きく変わり,さらに,2014年の国立大学法人法と学校教育法の改正で学長の権限が強化され,教授会の力が弱まったことなどが背景にあるとしている。京都大学の大河内泰樹教授のコメントも掲載しており,大学で民主的なチェックが働かなくなっていることを指摘し,選考会議のメンバーさえ明らかにされていないことから説明責任が果たされていると言えるのかと疑問を呈している。

 詳しくは記事を読んでほしい。

 

 ただ,やはり,残念なことに,朝日新聞の記事では,ある教授の話として「意向投票の結果は現体制に対する不満の表れだ」とのコメントを載せるのみで,「現体制に対する不満」というのが具体的に何なのかについては何も書いていない。なぜそれを聞かないのだろうか。聞いたが書けないのか。竹之下氏に忖度したと疑われても仕方ないと思う。それを取材して報道しないと,上氏などが言うように,単なる権力闘争としか見られなくなってしまう

 医大の関係者も,現体制に問題があるならば,具体的な問題点を指摘して声を上げてほしいと思う。報復を恐れて難しいのだろうとは思うが。マスコミは,学内の声を丁寧に拾い上げて報道してほしい。

 単なる権力闘争なら,負けた紺野教授側が何も言わないのはおかしい。それは,アメリカ大統領選挙を見ても分かるだろう。学内から声が上がっているということは,単なる権力闘争ではなく,何かがある,ということだろう。

 今朝の新聞(福島民報福島民友新聞)では,医大の齋野和則事務局長が退職との報道もされていた。選考会議の運営をはじめとする理事長選考に関しては,事務局が関わっていると思われる。齋野氏は学内で何が起きているのか,一番分かる立場にいるはずだ。元々県職員であり,竹之下氏とも紺野教授とも直接の利害関係はないはずだ。齋野氏は,もう辞めるのであれば,黒田教授のように声を上げてほしい。

 

 

【追記】

 2月14日の福島民友新聞に,オンライン署名が医大などに提出されたことの記事が掲載された

 「理事長選考説明を求める」と題して,「県内の医療関係者が代表を務める「福島県立医科大学の理事長選について考える会」は13日までに、同大などに選考過程の詳細な説明を求める署名を提出した」と報じている。さらに「署名は同会の代表を務める「福島の医師」を名乗る発起人が「福島県立医科大学の理事長選考の不公平について」と題してオンラインで実施した。今月4日時点で1200人を超えた署名を中間報告として提出した」としている。

 これを書いている時点では,オンライン署名は1,400人を超えているが,伸び悩んでいる印象を受ける。「福島の医師」が誰なのかは,いまだ明らかでない。署名を提出したのなら,そろそろ名を明かしてもいいのではないか。こういうのは,匿名のままだとなかなか盛り上がらないと思う。そして疑問なのは,change.orgのオンライン署名のページには,署名を提出したとは書いていないことだ。署名を集めたのだから,どのような要望書をいつ誰に提出し,どのような反応があったのか,記載すべきだ。署名した人には個別に連絡が行っているのだろうか。署名した人の名前は,署名した直後はサイトに載せられる。リスクを冒してまで署名した医大の教職員の方もいるだろう。署名した人が裏切られたと感じないように,丁寧にフォローしないといけないし,そうしないと今後も署名の数は伸びないだろう。

 福島民友は,署名が提出されたという事実を坦々と伝えるだけで,毎日新聞朝日新聞のように理事長選の問題点を指摘することはしていない。新聞社としてのスタンスが分からない。福島民報との差別化を狙うなら,もっと踏み込んだ報道をする必要がある。ここまで知らぬ存ぜぬを通している福島民報が踏み込んだ記事を書くとは思えない。福島民友には,地元紙として,先行して報道する全国紙にはない情報源を駆使して,より充実した記事を載せてほしい。

 また,13日からは県議会が開会した。共産党はこの件について何か質問するのだろうか。質問しても,新聞は無視するだろうか。注目していきたい。

 

 

【追記】

 福島県医大の整形外科にいた田地野崇宏医師(現在は脳神経疾患研究所理事長特別補佐兼南東北福島病院執行本部長COO. 福島県立医科大学整形外科学講座臨床教授)がTwitterで,医大の学内の掲示板に竹之下理事長の退陣を求めるビラが貼られていることを紹介している。

 今回の騒動は,竹之下派と前理事長の菊地臣一氏(故人)の一派との対立との見方もあるようだが,それだけでこれほどの大差がつくとは思えない。

 そもそも,竹之下氏を後継者にしたのは菊地前理事長のはずだし,紺野教授は整形外科だが菊地前理事長の弟子ではない(自治医大出身)。

 そういえば,菊地前理事長は腰痛の世界的権威であり,医療関係者でそのことを知らない人はいないほどの方であったが,竹之下氏の医師としての業績は聞いたことがない。そもそも何が専門だったのかも分からなかったので調べると,消化器外科が専門らしい。「シーボルト・メダル賞」という賞を受賞しているということだが,インターネットで調べてもどんな賞か分からなかった。「ジーボルト賞」というドイツ政府が設立した権威ある賞とは違うようだ。ここで紹介されている「たった一名」というのは,竹之下氏のことだろうか。

 

 

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