2026年3月2日,3日,6日の3日間で,テレビアニメ「機動戦士Zガンダム」がWOWOW(ライブ)で初放送された。もちろん,ハイビジョンリマスター版での放送である。「40周年記念」を謳っているが,最初の放送は1985年3月2日から1986年2月22日までなので,1年ずれている。同じく,3月9日からは「新機動戦記ガンダムW」が30周年記念としてWOWOW初放送される。こちらも,1995年から1996年にかけての放送だったので,1年ずれている。ガンダムWは,昨年,BS11で30周年の放送があった。本来は「機動新世紀ガンダムX」の30周年記念なので,こちらも放送してほしい。
最初のテレビ放送の頃とは違い,今は様々な手段でガンダム作品を見ることができる。ほとんど再放送されていない「Gのレコンギスタ」や「ガンダムAGE」などでも,テレビというメディアにとらわれなければ,視聴は容易だ。
そんな中で,今回WOWOWで放送される意義は何か。
現在,繰り返しガンダム作品を再放送しているのは,BS11とBSアニマックスの2つだろう。この2つのチャンネルとの比較をしてみたい。ポイントは3つあって,①画質,②字幕,③テロップ,である。
①画質は,WOWOWとBS11はフルハイビジョン(1920×1080)であり,BSアニマックスはハイビジョン(1440×1080)である。現在,フルハイビジョンで放送している放送局は珍しく,WOWOWとBS11の画質の良さは貴重である。昨年放送された「GQuuuuuuX」を地上波と比較したところでは,明らかにBS11の方が画質が良く,レコーダーに録画したときのファイルサイズも全然違かった。「Zガンダム」の場合は,3倍録での比較なので正確ではないが,この3局でのファイルサイズの違いはほとんどなかった。元がSD画質だからだろう。
②字幕は,WOWOWとBSアニマックスは「字幕あり」,BS11は「字幕なし」である。なお,WOWOWとBSアニマックスの字幕は同じではない。BS11が字幕なしなのは,「Zガンダム」に限らずほかの放送でも同じで,一番残念なところだ。「Zガンダム」は,モノラル放送でもあるせいか,セリフが聞き取りにくいところが多い。今回もまだ見始めたばかりだが,何度も見ているのに間違って理解していたセリフが幾つかあった。ちなみに,第5話まで見たところ,字幕はシャアが水色,カミーユが黄色で,緑はまだ出てきていない。
③テロップは,BS11は本編が始まってすぐ「テレビをみるときは、へやをあかるくしてはなれてみてね」というテロップが入る。Zガンダムを見る年齢層を考えると,とてもおかしなテロップだし,余計なお世話だ。テレビ局のアリバイづくりのためのこういうテロップは有害でしかない。WOWOWは,本編中にこういうテロップは入らず,番組が始まる前に「画面を見るときは部屋を明るくしてできるだけはなれて見てください」という絵が入る。BS11よりはバカにした感じは少なく,良心的ではあるが,それでも余計なお世話だ。
話はそれるが,Zガンダムではまだ確認していないが,1月に放送された宇宙戦艦ヤマトでは,爆発シーンなどでいわゆるポケモンショックを防ぐための減光処理が行われ,とても酷かった。テレビかレコーダーが壊れたのかと思ったほどだ。2月23日にTBS系で放送された「シン・エヴァンゲリオン劇場版 TV版」も同じくなかり減光処理が酷かった。2023年8月にWOWOWで放送されたときは,減光処理はなかったはずである。
BSアニマックスは,2022年7月頃ほうそうされたものを見る限りは,本編中で部屋を明るくしろといったテロップは入っていなかった。ただし,アニマックスでは,ロゴが右下にカラーで表示され,4:3のZガンダムでも絵に被さって表示されるので,非常に邪魔だ。BS11では放送局のロゴは4:3だと絵に被らないが,字が大きいので目立つ。WOWOWは,ほんのわずかに被るが文字が小さいのでBS11より気にならない。
「Zガンダム」はおそらくガンダムシリーズの中でも一番多く見た作品であり,細かいところまで覚えていると思う。そこで,気になっていることを3つ書いておく。
① 第1話でのセリフカット
第1話「黒いガンダム」のAパートに,カミーユがファと一緒にブライトに会いに港に向かうシーンがある。2人がエレカに乗り込み,発車した後,それを見ていたベンチに座る男が「ファ~ちゃん」と声をかけるのだが,いつのものからか,このセリフがカットされてしまった。
初回放送時にビデオ録画したものを繰り返し見ていたので,しっかりと覚えていたのだが,DVD以降ではセリフがカットされて口だけが動いている不自然な絵になってしまった。とっくの昔にビデオテープは処分してしまったので,本当にこのセリフがあったのか,だんだん自信がなくなっていたのだが,検証してくれている方がいた。
https://x.com/sakutosero/status/1386118262392459269
これを見ると,LD版からセリフはカットされていたようだ。理由は分からない。
ほかにも,第1話でBGMが変わっているなどの書き込みも見かけたが,どこか覚えていないし,検証はできない。
② 宇宙が青くなる問題
ネットで検索しても,問題にしている人はほとんど見たことがないのだが,Zガンダム最大の問題がこれだと思っている。
初めは黒だった宇宙が,だんだん青っぽくなり,最後は真っ青になるのだ。そして,これはその後の富野ガンダムでもずっと引きずっていき,最終的にGレコに至ってようやく完結したと考えてよい。
なぜ問題かというと,青い宇宙は見ていてとっても気持ち悪いのである。
確かに,ファーストガンダムの頃のSFアニメの宇宙は,黒ではなかった。ファーストの第1話ではかなり黒っぽいが,黒ではないように見える。その後は,その時々でいろいろなのだが,より紺色っぽくなっていったと思う。それでもZガンダムの最後の頃よりはマシだ。宇宙戦艦ヤマトも黒ではなく,青っぽかったり灰色っぽかったりしていた。イデオンはかなり黒に近かったと思う。
少し詳しく変遷を見ていくと,第1話から数話は,黒がベースで,星が集まるところだけ青や茶色になっていた。星は割と大きめで,数も多い。それが第7話「サイド1の脱出」あたりから青が目立ってくる。ベースが真っ黒でなく青みがかった黒になってくるのだ。第9話「新しい絆」での月面での宇宙は,終盤の真っ青に近いくらいのものもある(月には大気がないので,空が青く光るというのはおかしい)。この状態が第11話「大気圏突入」まで続くのだが,ファーストを見ていた目からすると,そこまでの違和感はない。ただ,第1話あたりと比較すると,明らかに変わってきているのは分かり,「なぜ?」と思わずにはいられない。
地球編を挟んで第21話「ゼータの鼓動」になると,一層青みが強くなった印象を受けるが,気にしなければそこまでの違和感はないかもしれない。しかしやはり徐々に青みは強くなっていくように思う。そして,どこを見ても「黒」とは言えない絵になる。
そして,第2の地球編が始まる第35話「キリマンジャロの嵐」では,ついに真っ青になるのである。部分的に色の濃いところもあったりするが,基本的に「青」である。それもかなり彩度が高い。こんな宇宙はない。結局,これが最終話まで続くことになる。気持ち悪いことこの上なく,素直に楽しめなくなってしまった。
劇場版では宇宙を黒くしてほしかったが,テレビ版の絵を流用したシーンはそのまま,新作部分は,後半のテレビ版よりは多少色が濃いものの,黒にはされなかった。
何かのインタビュー記事で読んだ記憶があるのだが,あるスタッフの方が,話が暗いので宇宙が黒だと一層暗く感じられるから,明るく(青く)した,というような話をしていたように思う。
「ガンダムZZ」では,美術が東潤一氏から池田繁美氏に変わったせいか,宇宙の色は大きく変わり,後々まで引きずる新たな問題を起こすことになる。
宇宙そのものは,真っ青はやめて,Zの中盤のような濃紺ベースに薄い色の部分が混じる形に落ち着いた。Zの終盤ほど酷くはないが,それでも違和感は残った。一方,コックピットの360°モニターの宇宙の色は,Zの青よりもさらに明るい,スカイブルーに近い色に統一されることになった。これはかなり強烈な色で,この使い分けは,その後ずっと続くことになる。
ちなみに,ZZの後に同じ放送枠で放映された「機甲戦記ドラグナー」の宇宙は真っ黒で,違和感がなく,とても安心して見られた記憶がある。
結局,制作者サイドの意図と異なり,宇宙を明るくすることが話の暗さを強調する結果になったと思っている。ZZも,後半はかなり暗い作品になってしまっていた。話が暗い代わりに絵を明るくしたいのなら,ほかの方法を採るべきだったと思う。
続いて「逆襲のシャア」では,宇宙はほぼ黒に戻る。完全な黒とは言い難く,青みがかった感じもするが,かなり違和感はなくなった。ただし,場面によっては,薄い青の部分が目立つところもあった。コックピット内は,ZZよりさらに色が薄くなり,より強烈になった。ほとんどスカイブルーと言っていいくらいで,コックピット内と外の宇宙の両方を同時に映したカットを見ると,その違和感は一層強くなる。
「F91」は,宇宙はついに真っ黒になったように見える。部分的な青いところもかなり少なくなったので,違和感はほとんどない。コックピット内が薄い青なのはそのままだが,逆襲のシャアよりは若干濃くなった気がする。
「Vガンダム」は,宇宙は完全に黒になり,しっかりと星を点で表していて,青っぽい色で見せることが少なくなり,より自然に見えるようになった。コックピット内の色もかなり濃くなり,違和感は少なくなった。
なお,Vガンダムで特筆したいのは,ガンダムのビームライフルの音で,初代ガンダムの音とほぼ同じになっており,放映当時とても感激した。その後は,Gセルフのビームライフルの音が初代ガンダムを彷彿させる音になっており,気に入っている。
「∀ガンダム」の宇宙の色はVガンダムに近く,より洗練された感じがする。コックピット内は,Vガンダムより鮮やかな青になり,違和感が強くなった。
そして,「Gのレコンギスタ」に至って,ついに外の宇宙とコックピット内の宇宙の色が統一された。ただし,宇宙の色は,黒がベースなのだが,オーロラのような青や緑の筋が入り,派手な色彩になっている。とはいえ,もちろん,Z終盤のような気持ち悪さはない。
非富野ガンダムは,各作品とも基本的に宇宙は黒がベースで,製作時期にも応じて作画に多少の違いはあるが,作品ごとに特筆すべきことはないように思う。
このように,富野ガンダムの宇宙の色は変化しているのだが,それが富野監督のこだわりから来ているのか,逆にこだわりのなさから来ているのかは興味深いところだ。自分としては,こだわりのなさを反映している(スタッフの暴走とそれを引きずった結果)ではないかと思っているのだが。
③ 「カミーユ」連呼しすぎ問題
これは今回見直して気が付いたことなのだが,ファが「カミーユ」と連呼しすぎで,ジェリドと事件を起こす原因はここにあったのだ,ということだ。
ファの最初のセリフがまず「カミーユ」であり,4回連続で呼びかけ,カミーユから「言うなよ。カミーユってのが俺だって,誰にでも分かってしまうだろ」と言われても「みんな知ってるわ。本人だけが承知してないんじゃない」と返し,ジェリドと出会うまでに計7回「カミーユ」を連発する。それからジェリドが例の「女の名前なのに,何だ男か」と言ってカミーユを怒らせるまでに2回,カミーユがジェリドを殴るまでに3回も呼ぶのだ。ファはカミーユのすぐそばにいて,ジェリドの声を聞いてカミーユが怒っているのを目の前で見ているのに,さらに3回も呼ぶのである。合計12回だ。
ファが人前であるのをはばからず「カミーユ」と連呼するのは,親がチョロチョロしている小さな子供に対して呼びかける様子に似ている。ファは,幼なじみなので,カミーユが自分の名前にコンプレックスを持っているのは百も承知のはず。それなのにわざわざ怒らせるように「カミーユ」を連呼し,こういう結果になってしまった。最終的に事件の原因を作ったのはファだと言っていいだろう。だが,本人には最後まで全然その自覚がなかったようだ。
Zが苦手だと言う人がよく問題にするのは,この第1話~第2話にかけての事件でのカミーユである。確かに相当ヤバい。初回放送時はまだカミーユより若かったので,ニュータイプの高校生はこういうものなのか,くらいに思って見ていたが,今見返すと相当ヤバい。それでも,最初のジェリドとの喧嘩はまあ逆上して抑えが効かなくなったということで理解できなくはないが,釈放が決まった後にマトッシュの顔面にケリを入れるところになると,もうついて行けない。一旦落ち着いたのだから,あそこで大人しく帰っていれば(それでは話が始まらないが)と思わずにはいられない。
とはいえ,非富野ガンダム作品に頻出する相当ヤバい奴ら(あえて具体名は出さない)に比べれば,カミーユはマシだと思う。本当にヤバいのはこのときくらいだからだ。その後,遅刻してエマとウォン・リーに修正されたりするが,まだ正式に軍人になったわけでもない高校生なので,たいしたことではない。むしろ行きなりビンタを食らわせて,暴行の限りを尽くすウォン・リーの方がはるかにヤバい(カンフーの達人という設定なのに,ZZでジュドーに簡単に負けるのは,おかしい。カミーユは空手をやっていたのに全く歯が立たなかったのだから)。
その後のカミーユは,いろいろあったが,おおむね優等生だったといっていい。シャアを殴るくらい,かわいいものだ。
一方,原因を作ったファの方は,第22話からしばらく,暴走してわがままの限りを尽くすが,エマに修正されて少し大人しくなり,シンタとクムが登場してからはすっかり落ち着く。
このように,2人とも,非富野ガンダムに出てくるすごくヤバい連中とは全然違うのである。カミーユもファも人間として成長するが,非富野ガンダムに出てくる奴らは,たいてい成長しない。そして無残に殺されることが多い。
ということで,「カミーユ」を連発するファは,場の空気を全く読めないヤバい女子高生にも見えるのだが,ファのファンの立場からは(Zガンダムに登場する女性の中では,やっぱりエマとファだ),好きな男の子の名前を呼びたくてしょうがない乙女心からのものだったと思いたい。ちなみに,やはりファの声は松岡ミユキさんじゃないと。