福島県立医科大学の次期理事長予定者選考について(その5)

 昨日(2023年2月27日)の福島県議会2月定例会本会議の追加代表質問で,共産党の宮本しづえ議員が福島県立医科大学の理事長選考に関して質問をした

 今日(2月28日)の毎日新聞福島版でそのことが取り上げられている。記事によると,宮本議員が「選考過程の透明性の確保や今後の制度の見直しを大学に求めるべきでは」,「『しっかりとした透明性の確保が必要だ』ぐらいは答弁してもよいのでは」などとただしたのに対して,内堀知事は(部長ではなく,知事本人が答弁したようだ)「公立大は地方独立行政法人法で自主性・自律性が尊重されており、選考は関係法令や大学規程に基づき大学が対応するもの」,「今後の制度の在り方についても大学が対応するもの」と述べ,選考プロセスに口を挟まない姿勢を示したという。

 「知事が任命する」とされていることをどう考えているのだろうか天皇と同じだとでも思っているのか。大学の自治を理由に不干渉を貫くのであれば,大学の自治が機能するようにするのも知事の責務ではないか。医大はいわば県の子会社なのだから。

 さらに,毎日新聞によると,黒田教授らによる内堀知事への文書については,賛同者が23人に増えているそうだが,県から回答はないのだという。

 そして,県は医大に毎年100億円超の運営費交付金を交付しているという。その原資は,税金である。

 

 宮本議員のこの質問を記事にしたのは,毎日新聞だけのようだ。地元2紙は,例によってスルーしている

 

 福島県議会ではYouTubeで本会議の様子を公開しており,この日の質問も,これを書いている時点で,宮本議員の前に質問した議員の動画は昨日のうちに既にアップされているのだが,宮本議員の質問と知事の答弁はまだ配信されていない。公開が遅れているのには何か訳があるのだろうか。

 

 

【追記】

 宮本議員の質問はなぜかいまだに(3月2日現在)YouTubeにアップされていない。同じ日に質問した佐久間議員の動画も消えてしまっている。

 

 理事長選とは関係ないが,附属病院で医療事故が発生したホームページでひっそりと告知されている。どんな疾患でどんな手術が行われたのか,何科でのことなのかも書いていないので,どうもよく分からない。患者は10歳未満で,術後に起きた医療事故であり,複数の診療科が関わっているということなので,小児外科ほかの診療科が関わっているということだろうか。

 

 

【追記】

 宮本議員の質問と内堀知事の答弁はいまだ(3月4日現在)アップされていないが,3月2日の紺野長人議員の一般質問で,この件について触れられていた。

 福島県議会の公式YouTubeの6分33秒頃からの映像であるが,「県内の医師不足解消に向けた修学資金制度の在り方について」という質問の中で,「県立医大の県外からの志願者が県内を上回ったとの報道もあり、県内の医療機関で働くメリットや魅力をどう高めるかが問われています。そんな中、理事長選出をめぐる問題が引き金となり、大学の影響を受けない県外の医療機関に移ろうと考える医師が増えているとの報告もあり、医師不足は更に深刻化しかねない状況にあります。ある整形外科の専門医は、今回の問題の渦中で、大学と関係のない県外の病院に移りたい、しかし、自分を頼っている多くの患者さんを放り出せないと苦しい胸の内を話してくれました。」と述べている。

 紺野議員は,このほかにも,医大の看護師や県職員が不足していること,県立高校の統合の問題など,共産党かというくらい厳しい質問をしている。

 理事長の任命がいつになるのか分からないが,このままだと何事もなかったかのように竹之下氏の3期目がスタートすることになってしまいそうだ。

 内堀知事には,何としても竹之下氏を理事長にしたい理由があるのだろうか

 

 

【追記】

 「財界ふくしま」4月号で「福島医大理事長・学長選出の収まらない余波」と題してこの件が取り上げられている。

 やはり,残念ながら,理事長選出方法の問題点を書き並べるだけで,なぜ竹之下理事長が惨敗したのか,すなわち医大内部で何が起きているのか,という本質的なことには全く触れていない

 次号でも引き続き取り上げるようではある。

 

 また,「月刊タクティクス」3月号でも「今回の予備選挙の反省を今後の医大運営に生かして欲しい!! 大差がつき過ぎた理事長予備選挙」と題して取り上げているが,内容は確認していない。

 

 

【追記】

 「財界ふくしま」4月号の詳細が分かった。

 黒田教授らの有志の会が内堀知事に提出した提出した文書の全文が掲載されているほか,これまで新聞等では明らかになっていなかったことも書かれている。

 有志の会の文書はここでは転載しないが,ぜひ有志の会で公開してほしい。

 ここでは,新たに分かったことのいくつかを挙げておく。

◎意向投票の投票率は85.7%であり,前回63.3%,前々回72.3%を大きく上回った。教職員の関心が高かったことが分かる。

◎黒田教授は意向投票管理委員会の副会長であった。

◎選考会議後の教授会で,選考会議の議長を務めた挾間章博副理事長が,「今回の選考は本学の名誉を守るために行ったものです」との趣旨の発言をしたと議事録に載った。

 注)「本学の名誉を守るため」の意味は不明

◎財界ふくしまが挾間議長に取材を申し込んだが,事務局を通して「応じられない」と断られた。

◎財界ふくしまが事務局に取材したところ,事務局次長が「これまで選考理由については,公表してきておりませんが,選考結果については公示するということになっています。これまでも公表してきておりませんので,今回も公表しないという形で整理させて頂いたということです。定款並びに選考規程には(公表しないとの)具体的な記述はありません」と話した。

◎同じく,事務局次長は「大学としては,選考会議の結果に基づいて申し出を行ったのですが,そこに重大な瑕疵があった場合,任命権者は知事でありますので知事がそういった(待ったをかける)場合もあるんだろうと思います。ただ,今回が重大な瑕疵に当たるかどうかというところは,私どもは申し出をした側ですので知事の判断になると思います」との考えも示した。

◎選考会議の委員6人は,経営審議会から挾間副理事長,竹石理事(附属病院長),外部委員の前原白河厚生病院名誉院長の3人,教育研究審議会から大戸総括副学長,藤森医学部長,坂本看護学部長の3人であった。

◎財界ふくしまは,選考会議の採決は4対2で,現職の竹之下理事長が選出されたともいわれている,としている。

◎今回の選考委員の中で学長(理事長)の指名でなかったのは,藤森医学部長と坂本看護学部長の2人であった。財界ふくしまは,この2人が採決で反対したのだろうと見ているようである。

◎有志の会が併せて提出した要望書「理事長選考の違法性について」は,東京の花園法律事務所の一色奈保弁護士が作成した。

◎取材に対し事務局次長は,今後理事長選考に関する「規程を改正する方向に向かうのか,向かわないのかを判断するのは選考会議になります」と語った。

 

 

【追記】

 今日(2023年3月10日)の福島民報に,「福医大理事長選 選考過程説明求め県に1649人分の署名」と題してこの件の記事が出た。

 福島民報は理事長選の問題についてだんまりを決め込んでいたので,ようやくの記事だ。しかし,具体的な問題点については何も触れておらず,「一応報道しました」というアリバイづくりに見える。

 記事の内容は,県内の医療関係者が代表を務める「福島県立医科大学の理事長選を考える県民有志の会」が3月9日に,選考過程の詳細な説明を求めるオンライン署名1649人分を県に提出した,というもの。選考の正当性や竹之下氏が選出された理由などの回答を求める質問状も送付したという。

 これはもちろん,福島民友新聞が2月14日に報じたオンライン署名と同じものだろう。しかし,2月14日の記事では,署名を提出したのは「福島県立医科大学の理事長選について考える会」とされていた。オンライン署名のホームページでは,発信者は「福島県立医科大学の理事長選挙を考える県民有志」となっている。同じ人がやっていることだろうが,こういうところがデタラメだと,県には相手にされなくなる可能性が高くなるので,ちゃんとした方がいい。また,以前も書いたが,名前を明かさないと相手にされない可能性は更に高まる。もはや,このオンライン署名も,何をしたいのかよく分からなくなっているように思う。署名の数の伸びも鈍っていて,あまり増えていない。確かに,福島民友の記事では「中間報告」として提出したと書いてあるが。

 それにしても,福島民報の記事は中途半端だ。地元紙としての責任を果たそうという気概は全く感じられない。

 

 話は変わるが,岡山大学医学部が揉めている。ここで登場しているシーメンスヘルスケア社だが,福島県医大財務諸表を見たところ,「Ⅶ.重要な債務負担行為」のところに,シーメンスヘルスケア・ダイアグノスティクス社と「検査部検体検査新体制構築事業に関するパートナーシップ契約」なるものを24億7,500万円もの金額で締結していることが分かった。この契約は,令和元年度から始まっており,令和3年度の財務諸表では,年額1億6,500万円にもなっており,それから計算すると,15年を超える契約になるようだ。

 どんな契約なのか,名前だけからはよく分からないので,引き続き調べたいが,15年契約というのは穏やかでない感じがする。もっとも,岡山大学の30年で約240億円というのには全然及ばないのではあるが。

 

 

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