レコード芸術「最終号」

 2023年7月号をもってレコード芸術が休刊した。

 

 まだ全部読んでいないのだが,いくつか気になること(文句を言いたいこと)があるので,書いておく。

 

 「休刊」であって「廃刊」でないことは紙面でもはっきり書いてあるわけだが,何人かの執筆者が「最終号」とはっきり書いているは気になった。例えば157ページの國土潤一氏など。どんな思いでそう書いているのか分からないが,無神経で気に入らない。あえて抵抗の意味を込めてそう書いたのかもしれないが,それならそう書くべきだ。

 一方,「現在の本紙での・・・最終回」(82ページの増田良介氏)と言葉を選んで書いている人もいて,こちらの方が誠実なのは間違いない。

 また,76ページで長木誠司氏は「(この項続く)」とあえて書いている。何とか抵抗を示したかったのだろう。で,続きはいつどこで読めるのか?「ディスク遊歩人」は毎号楽しみに読んでいたが,長木氏の思いが強すぎたのか,今回は特に難解だった。

 

 休刊の前に,ためておいた記事を出し尽くさないと思ったのだろう。巻頭のインタビューが2本になり,これまで2回に分けて掲載されていた「青春18ディスク」が1回分に。そんなこんなで増ページになったので,特別定価1,540円(通常1,430円)となったが,特別定価とするほどの内容かは甚だ疑問。増ページの要因のもう一つが特集2の「レギュラー執筆者56人+α総登場 『レコ芸』で出会ったこの一枚」だと思われるが,完全に蛇足だ。

 そんな取って付けたような特集ではなく,休刊前に71年間を総括するような記事があってもいいと思うのだが,そういった類の記事は全くなし。

 それでしれっと特別定価で出してくるような姿勢が,読者離れを加速させたのではないか。

 

 

 一番頭にきているのは,付録の問題である。

 7月号の発売日の数日前に,たまたまツイッターを見たところ,付録として指揮棒とポストカードが付くという。さっそくネット書店をいくつか見たが,数量限定ですでに売り切れだった。

 もしかして書店でならと思い,お昼頃いつもの書店に行くと,すでに売り切れ。嫌な予感がしたので,取り急ぎネットショップで1冊注文し,とにかく早く読みたいので夕方書店回りをして1冊購入できたが,やはり付録はなかった。無駄に2冊買ってしまったが,1冊は保存用にするしかあるまい。ネットでは,既に入手困難になっているという情報もあり,買えなかった方には申し訳ないのだが。

 付録が付くことは,6月号の「次号予告」には何の告知もなく,発売日近くなってインターネットでこっそり出ていただけのようだ。

 こんなやり方では,おそらく。現在のレコ芸の主要な読者である60代以上の方は,ほとんど知らずに付録をもらえず終わってしまったのではないか。知らぬが仏とはこのことだ。音楽之友社のサイトでも,付録については何も書いていない。

 6月号でしっかり告知し,欲しい人はすぐ書店で予約できるようにすべきだった。

 こういうところからも,読者を軽視する姿勢がよく分かってしまった。特集に編集部の人が書いている場合ではないのだ。

 

 もう一つ,読者軽視と思わざるを得ないのが,「クラシック・データ資料館」の扱いである。とりあえず9月30日までは利用可能とのことだが,それは当然のことであって,その後は現在検討中だという。タイミングなどのデータがないなど不完全なところもあるが,非常に貴重なデータで,音楽之友社としてもレコ芸とともになくしてよいものではないと思われる。

 ということで,今後はしれっと利用料を取るのだろうか。それとも何かと抱き合わせでお金を取るつもりか。

 そんなこんな考えると,レコード・イヤーブックを付録に付けて,年1回だけレコ芸を発売する,ということもあるのかもしれない。

 

 7月号の内容についてはまた書くことがあるかもしれないが,総じて残念な終わり方だったのは間違いない。とにかく,読者を大事にしていないなという一言に尽きる。

 最後の特集の巻頭言が,レコ芸衰退の犯人の一人だと思っているY氏だというのも残念極まりなく・・・。