DATの思い出

 本屋で「ステレオ時代」Vol.19がDATを特集しているのを見つけたので,買ってしまった。

 

 1990年代の半ばから10数年間,DATをメインの録音機として使っていた。

 パイオニアのものを2台利用し,今も1台は現役である。もっとも,録音には使っていない。テープがないからだ。

 

 機械は時々使わないとダメになるので,なるべく録りためたテープ(700本以上ある)を再生するようにしているのだが,一時期ほとんど電源も入れない時期があって,かなり久しぶりに再生してみたところ,ノイズが入ってダメなテープが多数あることが分かった。

 

 いろいろ試してみると,比較的新しいアクシアのテープが軒並みダメなことが分かった。古いものの方が,大丈夫なのだ。しかも,古い機種で録音したものの方が安定している。

 ある時期から,アクシアのテープが一番入手しやすく,10本セットだと箱に入っていて,インデックスも使いやすいものだったので,半数以上がアクシアのテープなのだが,どの辺からダメなのか正確には分からないものの,かなりの本数がノイズが出てダメな状態である。

 

 DAT自体はメーカーの修理期間も過ぎているので,パイオニアに聴いても無駄だろうと思うのだが,何とかならないだろうか。

 

 

サブスクで完全に変わった音楽生活①

 サブスクがメインで音楽を聴くようになって,半年以上が経った。

 これまでのエアチェック中心の生活から,全く変わってしまったと言っていい。

 

 サブスクにすぐ手を出さなかったのは,音質の問題が一番大きかった。ロッシー音源だったからだ。もちろん,SPACE DiVAと同等以上のスペックであり,FMとは比較とならないわけだが,どうも気が進まなかった。

 その一方で,ハイレゾにも対応し音の良さが売りが売りのmora qualitasは,曲が少なすぎて話にならなかった。

 mora qualitas,Amazon Music HD,Spotifyを試用してみて,サブスクメインに移行したのは,実は経済的な問題が大きい。そして何より,Amazon Music HDが非常に多くの曲でCD以上の音質で提供するようになっていたというのがある。

 そこで,ついにMUSIC BIRD(SPACE DiVA)の契約更新時期に合わせて解約することにし,サブスクメインに移行した。

 サブスクは,上記の3つを試用してみたが,まだどれに絞るか結論は出ていない。とりあえず,Apple Musicの無料期間終了後はAmazonにしようと思っているが,本命はSpotify HiFiではないかとも思っている。

 お気に入りの曲が増えると面倒になるが,サブスク間の移行はそれほど面倒ではない。この辺は,サービスが終了すると大変なことになる電子書籍業界とは違うところだ。

 

 

 さて,音楽を本格的に聴くようになってから,その中心は常にエアチェックだった。エアチェックとはすなわちラジオから録音することなので,当然FMということになる。クラシックならNHK一択だ。

 昔は,毎週(確か,土曜日)必ず新聞に一週間のNHK FMの詳しい番組表が掲載されていた。今では考えられないが,1面まるごとNHK FMの番組表だったのだ。

 それを隅から隅まで見て,録音したい曲に印をつけ,タイマーをセットするか,タイマーではうまく録れなそうなときは必ずその時間にステレオの前にいる,ということが習慣になった。

 

 録音するのは,カセットテープである。テープの種類がたくさんあり,録音可能時間もいろいろで,当然それらによって値段が変わってくるので,テープ選びは非常に重要だった。

 初めのうちは,もちろん,ノーマルのそんなに高くないのしか買えず,それを大事に使っていた。だんだん小遣いが上がるにつれて,高級なテープが買えるようになり,それがとてもうれしかった。買う前には,新聞でチェックした録音する曲に合わせて,必要な長さのテープの種類を書き出しておくのも大事な習慣になった。

 気に入っていたのは,TDKのカセットテープだった。まず,デザインが気に入っていた。種類も多かった。音質も,使っていたカセットデッキとの相性もあるのか,TDKが一番音がいいような気がした。曲名を書くインデックスのデザインも非常に重要で,これもTDKのが一番よかった。初めは手書きだったのが後からはワープロ印刷になったが,印刷しやすいのもTDKだった。テープに貼るシールの大きさやデザインも大事で,これもTDKがよかった。

 カセットテープの販売末期には,TDKはだんだん種類が減ってきて,入手しづらくなったりもし,ほかのメーカーのものを買わざるを得なくなって,残念だった。

 カセットテープについて書くとまだまだ書けるが,音楽の聴き方とはズレてくるのでこのくらいにしておく。

 CDを買ったりするたびに,同じ曲が入っているカセットテープは処分してきたが,それでもまだかなりの本数のカセットテープがあって,処分できずに置いてある。

 

 カセットテープの次に録音に使ったのは,DATである。これもすごい数のテープがまだあって,聴けるのだが,残念ながらそのほとんどを占める特定のメーカーのテープがなぜかノイズが出てまともに聴けなくなってしまい,困っている。

 DATは,CDなどデジタル音源もそのままの音質で録音できるという,当時としては夢のような機械だった。やはりメインはFMのエアチェックだったが,レンタルで借りてきたCDをデジタルダビングできたので(1世代だけ),非常にありがたかった。

 標準的な120分テープの場合,LPモードで倍の240分まで録音できるというのもよかったが,FMの場合はなぜかノイズが大きくなるという現象が発生し,途中からはLPモードは使わなくなった。DATはカセットテープからの乗換えだと使い勝手に違和感がなく,移行しやすかった。あらゆる面でカセットテープの進化形と言え,カセットテープの録音で覚えたいろいろな技がそのまま役に立つのがよかった。

 

 DATと併用して,一時期MDもエアチェックに使ってみたが,音質の悪さと録音時間の短さがあり,DATから乗り換えるには至らなかった。

 ディスクなので使い勝手は抜群によかったのだが。ケース入りで保管もしやすく,大きさも手軽で,Hi MDを超える大容量のもの(=音もいい)が初めから出ていれば,DATに取って代わっていただろう。

 

 DATの次にエアチェック機となったのは,ヤマハのHDD/CDレコーダだった。これは今も現役だが,HDDがIDE接続なので,壊れたらもうおしまいである。

 HDDに録音して編集し,CD-Rに焼くというのは画期的だったが,テープメディアに録音していたときより格段に手間がかかるようになったのも確かだ。曲の前後を無駄なくカットし,正確にトラック分けしないといけないからだ。テープだと多少曖昧でもよかった作業が,そうではなくなってしまった。CD-Rにインクジェットプリンタで曲名などを印刷するのも手間だった。

 そのうち,パソコンでリッピングして保存するようになると,CD-RではなくCD-RWを経由してパソコンにリッピングするようになった。これまた手間で,いい加減疲れていたということはある。音楽を聴くよりも,編集してパソコンに取り込むのに時間がかかるようになってしまった。結局,エアチェックしたのはいいが,全然聴かないものも増えてしまった。そのうち聴こうと思っても,音源がたまる一方で,エアチェックした直後に聴かないと,ずっと聴かないことになってしまった。

 

 

 ここまではエアチェックする機器の話だったが,次に,音源の話に移る。

 

 最初に書いたとおり,まずはとにかくFMだった。民放は曲にDJの声がかぶったりするし,そもそもクラシックはほとんど放送されないので,NHK以外はほとんど聴かなかった。

 FM以外だとテレビ放送ということになるが,衛星放送がない頃は,N響アワーと芸術劇場,そして題名のない音楽会くらいしかクラシック音楽が聴ける番組はなかった。年に何回か教育テレビの特番で海外オケの演奏会が放送されたりもしたが。

 

 その後,衛星放送が普及してからは,NHKのBS2がFMと並ぶ音源となった。デジタル化されてからは,現在のBSプレミアムだ。

 そして,WOWOWでは,ベルリン・フィル定期演奏会を定期的に放送していた時期があった。ベルリン・フィルの放送がなくなると(デジタル・コンサート・ホールを始めたからか?),ウィーン・フィル定期演奏会が放送された。今では,ウィーン・フィルというと,来日公演のほかはニューイヤー・コンサートとシェーンブルン宮殿のコンサートくらいでしか目に(耳にも)することがなくなってしまったが,定期的に定期演奏会がテレビで見られるという素晴らしい時期があったのだ。

 ちなみに,ニューイヤーはともかく,シェーンブルンの方は,演奏の質も低く,毎年CDでDVDで出すというのはどうかと思う。はっきり言ってお遊びでしかなく,毎回がっかりさせられる。そんなのを出すくらいなら,もっとCDを出すべきだ。ベルリン・フィルはその辺しっかりしていて,ヴァルトビューネの野外コンサートをCDで出したりはしない。イベントとしての価値はあっても,芸術的な水準を満たしていないことをよく分かっているからだろう。

 ついでに言うと,NHKで放送すると,日本でデジタル・コンサートホールでは見られなくなる,というのは何とかしてほしい。放送して1年以内とかならまだ分かるが,しょちゅう再放送するわけでもないのに(NHKオンデマンドではずっと見られるのだろうか,確認していないが)ずっと見られないというのは困ったものだ。NHKの録画が失敗したときは,どうにもならなくなってしまう。

 テレビだと,ほかには,BS朝日ベルリン・フィル定期演奏会を放送していた時期があった。年始の特番でテレ朝系とフジ系がクラシックの特番をやることもあった。日テレは読響を持っているので,そちらが中心。ほかにも民放で注目すべき演奏会を放送することもあったが,一番クラシックに縁遠いのは,今も昔もTBS系だろう。全く関心がないようだ。順位付けをするとすれば,テレ朝,日テレ,フジの順で,TBSとテレ東は番外といったところか。

 

 エアチェックの音源としては,WOWOWの音声だけの放送として,セント・ギガというのがあって,クラシック音楽の番組もあった。

 

 ラジオに話を戻すと,メインの音源はFMからMUSIC BIRDに移った。今のTHE CLASSIC,かつてのCLASSIC 7である。

 今でこそ,圧縮音源のSPACE DiVAになってしまったが,2011年の7月まではCS-PCM放送(16bt,48kHz)で,CDを超える高音質だった。それをそのままDATに録音する,というのが,かなり長い間,エアチェックのスタンダードになった。

 MUSIC BIRDのCS-PCM放送の特徴は,コピーガードのないデジタル放送だった,という点が特筆される。つまり,SCMSに対応したDATなどにデジタル録音した後,更に1世代はデジタルコピーができたのだ。今のSPACE DiVAはそれができない。なので,DATからHDD-CDRレコーダーにデジタルコピーし,CD-Rに焼いて,パソコンでリッピングすることもできるのである。もちろん,CD-Rに移すにはサンプリングレートを変換しないといけないので音は若干劣化するが,貴重な音源をパソコンに取り込んで残せるというメリットは大きい。

 外付けのUSB D/Aコンバーターなどを使えばDATから直接パソコンに取り込むこともできるのではないかと思うが,調べていないので分からない。これをやり出すと,それだけで一生が終わってしまいそうなので。DATからだと等速でしか取り込めないし,それを編集(トラック分け)して,となると,1本を取り込むのにどれだけ時間がかかるか,とんでもないことになりそうだ。

 残念だったのは,CDを放送する場合は一度アナログ変換して48kHzにして放送していたよう(なので,もう1世代デジタルコピーできる)なのだが,CDより録音レベルがかなり低いのである。これは,SPACE DiVAになっても変わっていない。したがって,再生するときはかなりヴォリュームを上げないといけないし,何より,そのためにダイナミックレンジが小さくなってしまっている。せっかくCDを超える音質のフォーマットなのに,それが生かされないことになってしまっていた。

 それともう1つ,CD1枚の放送が終わると,管理用の信号なのか,すごく小さな大人のだが,「ピー」という音が入るのだ。最近のCDは曲の前後の余白を多く取っているものが多いのでほとんど問題ないのだが,初期のCDだと残響がまだ残っているのでは?と思うようなタイミングで終わってしまうものもあり,そうすると,すぐ「ピー」と入るので,曲の前後を切るタイミングが非常に難しいときがあった。

 

 2011年8月からは圧縮音源のSPACE DiVAに移行してしまい,非常に残念なことになってしまった。CS-PCM用のチューナーは使えなくなるので,SPACE DiVA用のチューナーを無料で送ってくれたが,今さらFMに戻るわけもなく,その後約10年間,SPACE DiVAのお世話になることになった。

 CS-PCMのときからそうだったが,結局,たくさんチャンネルがあっても,CLASSIC 7(THE CLASSIC)以外のチャンネルを聴くことはほぼなかった。

 

 

 長くなってしまったので,サブスクでどう変わったかは,別記事で書くことにする。

 

 

Apple MusicとAmazon Music ②

 Apple Musicを使い始めて3か月が過ぎた。Apple製品は持っておらず,AndroidWindowsで使っているが,Androidは途中からハイレゾロスレスに対応したので,i Phoneなどと同等の使い勝手となったのが嬉しい。

 

【音質】

 Apple MusicとAmazon Music HDの音質を比較できるほどの環境ではないので,スマホで聴く限り,違いは分からない。

 それよりも,どれだけの曲がロスレスハイレゾに対応しているかが問題だ。

 初めのうちは,Apple Musicはロスレスハイレゾの曲が圧倒的に少なかったが,もはや同等レベルにまで来たと思う。曲やアルバムによって,AppleAmazonでどちらかがロスレス,どちらかがロッシーだったりすることはある。

 Appleの方は,アルバム単位で管理されているようだが,Amazonは曲ごとなので,1つのアルバムの中でハイレゾと非ハイレゾが混在しているものがまだまだあり,これは早くやめてほしい

 音質が分かりやすいのはAmazonの方で,検索するとすぐ分かる。Appleは,アルバムか曲を選択しないと分からないので不便だ。サンプリング周波数とビットレートも,Amazonは簡単に分かるが,Appleはどこを見れば分かるのかが分からない。さらに,Appleには「Apple Digital Master」とされているアルバムがあるのだが,これが実際のところどんなものなのかがさっぱり分からない。

 Appleの一番の問題は,Windowsではロスレスハイレゾも対応していないところだ。排他モードにも対応していない。排他モードはともかく,ロスレスハイレゾに対応しない限り,Apple Musicを無料期間終了後も継続することはないと思う。ここは,何としても早急に対応してほしい。

 Amazonは,サンプリング周波数とビットレートを自動で最適化するようにしてほしい。mora qualitasは対応しているので,すぐにでもできるはずだ。

 

【使い勝手】

 検索も含めた使い勝手については,一長一短としか言いようがない。

 画面のデザインは,ホワイトも選べるAppleの方が好みだが,どうしてもこちらでないと,というほどの差はない。

 どちらも,スペアナやレベルメーターなどのギミックが追加されるともっと楽しめるのだが。

 

【曲数】

 これも,どっちもどっち。

 実は,ここに伏兵がいて,自分が聴きたい曲の場合,Spotifyには,どちらかにしかない曲やアルバムがほとんどあるのだ!

 

【空間オーディオ対応】

 まだまだこれからという感じがするが,今のところ,手軽に体験できるのはApple Musicの方のようだ。Dolby Atmos対応のスマホを持っていれば,通常のイヤホンやヘッドホンでも体験できる。Amazonは,どうやったら聴けるのかさっぱり分からないAmazon Echo Studio端末だと聴けるというが,そんなの持ってないし,全然一般的じゃない。

 必須かというとそうではないが,確かに聴けると楽しい。これから流行るのか,消えるのか・・・。

 

【結論】

 サブスク中心で音楽を聴くようになって,音楽を聴くスタイルが全く変わってしまった。そのことについてはそのうち書こうと思っているが,エアチェックがメインだった生活と比較すると,まさに「解放された」としか言いようがない。タイマーをセットして,いろいろ編集したりもしてメディアに残し,曲名を書き込んだり,といった音楽を聴くこと以外の時間にどれだけ無駄な時間を費やしたのだろう!こういったことのほとんどから,いきなり解放されてしまったのだ。つまりは,音楽を聴く時間が増えたということだ。

 

 さて,複数のサービスを併用できるならいいのだが,経済な問題からも,1つに絞るしかない。無料期間を利用してAppleAmazonを併用して思ったのだが,2つ併用するのは単純に面倒でもある。

 1つに絞るとすると,現状ではAmazon Music HD以外の選択肢はないApple MusicはWindowsではロスレスハイレゾが聴けないからだ。Windowsでもロスレスハイレゾで聴けるようになれば,Appleにする可能性が高い。

 

 今はそういう状況だが,Spotify HiFiが始まれば,本命になる可能性が高い。聴きたい曲が一番あるのはSpotifyのようだからだ。金額と空間オーディオの対応状況がポイントになるだろう。今年後半から始まるという情報が流れてから,その後さっぱりなのだが,早くサービスの内容を発表してほしい

 

 mora qualitasは本当にダメなようだ。SONYの360 Reality Audioにも対応していないし,SONY自体が見捨てたとしか思えない。ATRAC始め,SONY内部の縦割りのせいで消される運命なのだろうか。いつになったらSONYは学習するのだろう。もしかして,社長はmora qualitasのことを知らないのではないか。

 しばらくは一部のオーディオマニアや評論家相手に細々と続いていき,最後はバッサリ捨てられるのだろう。

 

 

ツィメルマンとラトルのベートーヴェン・ピアノ協奏曲全集

 半年以上前から一部の楽章が先行配信されていた,クリスティアン・ツィメルマンサイモン・ラトルによるベートーヴェンのピアノ協奏曲全集がようやく全曲発売された(グラモフォン UCCG-45005/7)。

 

 先行配信のときから気になっていたが,ラトルの指揮(ロンドン交響楽団)のクセが強く,全体の出来が心配だったが,予想どおりであった。

 ツィメルマンのピアノはいつもどおり,透徹したピアニスティックな演奏で,文字通り「完璧」なのだが,ラトルの方は,ツィメルマンと全然合っておらず,とても残念な結果になっている。

 まず,テンポが合っていない。おおむね急速楽章でそうなのだが,速めのテンポのツィメルマンに対して,ラトルの方はダラダラしており,特に第4番の第3楽章はひどい。

 次に,ラトルのクセというか体臭とでもいうか,いわゆるドイツ風の演奏とは違う感覚の演奏に非常に違和感を感じる。これは,曲によってはバーミンガム時代から感じることがあったのだが,ベルリン・フィルウィーン・フィルだとあえてラトル逆らっていた(あるいはラトルが遠慮していた)のでそこまで気にならなかったものだ。しかし,ロンドン交響楽団に行ってからは遠慮無用にやりたい放題になっている。

 例えば,通常はメロディーラインなので強めに弾かせるパートをわざと弱く弾かせて伴奏だったり対旋律を強調するやり方がある。これは,うまくはまると効果的なこともあるが,ラトルが好んでやる箇所というのがすごく違和感のあるところばかりだったりする。

 あとは,これもよくラトルがやるのだが,通常音をはっきり区切って演奏するところをつなげて演奏する箇所がある。不良がダラダラ歩いているような雰囲気があって,すごく気持ち悪いのだ。

 その他,とにかく違和感だらけの演奏なのだ。ウィーン・フィルと録音したブレンデルとのものや,ベルリン・フィルと録音した内田光子とのものではここまで違和感はない。

 ラトルのクセとは別に,録音風景の写真を見ると,新型コロナのせいで奏者どうしの間隔をものすごく広くとっていおり,左右も奥行きもあり得ないような配置になっている。弦楽器もかなり少ない人数のようだ。

 何とかマイクセッティングでごまかそうとしたのだろうが,やはりどうにもならず,スカスカの奇妙なバランスになってしまっている。弦(特にヴァイオリン)が少ないのもはっきり分かり,第一ヴァイオリンの弾くメロディラインが弱々しくなってしまい,とてもバランスが悪い。

 

 それにしても,録音に慎重なツィメルマンがこの演奏の発売をよく認めたものだと思う。

 ベルリン・フィルと録音したブラームスのピアノ協奏曲第1番はかなりいい演奏だったので期待したが,大変残念な結果になってしまった。グラモフォンだったら,ほかの指揮者とベルリン・フィルを使うこともできたのではないか。

 

 

Apple MusicとAmazon Music

 Apple Musicを利用して1か月がたった。

 現時点で,AndroidスマホWindowsiTunesで使ってみた感想は,使い勝手はかなりいいが,問題も多いということだ。

 Androidではまだロスレスハイレゾには正式に対応していないが,ベータ版でロスレスハイレゾも試してみたので,その感想を書いておく。

 

【曲数】

 公表されている曲数(書かれているものによってバラバラだったりするが)では,AppleAmazonもほぼ一緒である。

 しかし,使ってみた感じでは,AppleにあってAmazonにないものはあったが,その逆はなかった。もちろん,本当は逆もあるのだろうが,自分が聴きたい曲についてはそうだった。なので,一概には言えないのだが,Amazonの場合,シリーズものの一部のアルバム(CD)がなかったり,アルバムの中の一部の曲がなかったりと,曲選びがデタラメだなと感じさせることがあった。

 

ロスレスハイレゾ対応】

 これは,現時点では先発のAmazonの圧勝だ。しかし,以前も書いたが,Amazonには,アルバムの中でHDの曲とULTRA HDの曲が混在するという,理解不能なものがあり,今後Appleはどんどん増えていくだろうことを考えると,杜撰な管理をしているAmazonの方が分が悪くなるかもしれない。Amazonでは,当然ULTRA HDでよさそうなもの(最近リマスタリングされて,ハイレゾでも配信されているようなもの)がまだSDだったりもするので,この辺も今後改善されないようだと大きなマイナスポイントになる。

 Appleの問題は,Apple製品の対応が先で,AndroidWindowsの対応が後回しにされていることだ。Androidはベータ版が出ているので間もなく正式に対応すると思うが,問題はWindowsだ。これもAndroidと同じくらいのタイミングで正式対応されないと,かなり辛い。排他モードに対応していないもの問題だ。

 

【使い勝手】

 個人的には,Appleの方が使い勝手がいいと思った。特に,「戻る」ボタンを押したときの挙動が,Appleは分かりやすい。Amazonは,Androidの「戻る」ボタンが隠れてしまうことがあり,どうやったら戻れるのか分からなくなることがある。

 白を基調にしたAppleのデザイン(黒も選べるが)も印象がよい。どうせだから,どちらも,いろんなスキンを用意して楽しめるようにしてくれるといいのだが。レベルメーターやスペアナ表示があっても面白いと思う。

 Amazonでは,説明が難しいのだが,一度端末にダウンロードしたものを削除すると,ライブラリに亡霊のように残ってしまうのに困った。キャッシュを削除すると消えるようだが,分かりにくい。この辺もAppleの方が分かりやすい。

 Appleでは,ダウンロード中にWiFiの圏外に出てしまったときに,そのままダウンロードが中断されずに続いてしまい,すごい量のデータ通信をしてしまったことがあった。Amazonでは未確認だが,そういうときは,一度ダウンロードが中止されるような仕様にしてほしいと思う。

 

 

【現時点での結論】

 まだ無料期間が残っているので,それが終わるときにどうなっているかなのだが,現時点では,最終的にはAmazonにするしかないかなと思っている。

 Amazonにない曲は,Spotifyの無料で聴くことはできそうなので。

 Appleの一番の問題は,Windowsハイレゾロスレスが使えないことである。これが解決し,排他モードにも対応すれば,Appleにしようと思っている。しかし,見通しが立っていないので,Appleの使い勝手の良さは惜しいのだが,Amazonにするしかなさそうだ。最終的に,併用というのは考えていない。経済的な問題が一番だが,何より面倒なので。

 ただし,Appleの無料期間終了までには,伏兵が出てくるかもしれないとも思っている。Spotify HiFiがその最有力候補であることは間違いない。いつ,どんなサービスで出てくるのだろうか。

 mora qualitasはもうダメなようだ。何も新しい情報がない。オーディオマニアだけを相手に,細々と続けていくつもりなのだろうか。アプリももう削除しようかと思っている。残念だ。

 

 

東京オリンピック

 いくらなんでもこれほど愚かだとは思わなかった。

 菅総理のことである。

 

 東京オリンピックは,タイミングを見計らって中止すると思っていた。しかし,その気は全くないようだ。

 やはり,一国民としてこの愚かな者達への抗議の一文を残しておかなければならないだろう。

 東京オリンピックは即刻中止すべきである。

 

 

 マスコミの報道のおかしさにも触れておかなければならない。

 聖火リレーを始め,批判を受けそうなことについて,マスコミは沈黙している。聖火リレーでの,あのバカとしか言いようのないスポンサーの宣伝カーのことも,あえて取り上げないでいる。

 聖火を持ってニタニタしながら走るランナーの顔を見ると反吐が出そうになるのであるが,報道はきちんとしてもらわないと困る。

 そして,ここに至っても,開会式がどうなるのか全く情報がないのも不可解だ。リハーサルはやっているのだろうに。

 

 

 もう一つ,宮内庁長官の発言についても書いておかなければならない。

 菅総理の御用学者と思われる一部の憲法学者憲法違反だと新聞等にコメントを出したが,多くの憲法学者は沈黙しているようだ。

 この問題は,内田樹氏らが言うように,政治の問題ではなく,科学の問題だ菅総理らは,政治の問題であることにして,西村長官の話を黙殺しようとしていると見るべきだろう。もっとも,菅総理は何も分かっていない可能性が高いが。単に余計なことを言いやがってくらいにしか思っていないかもしれない。

 

 この件で見えてきたことが2つある。

 1つは,政治的発言とは何かということ。まず,その議論があるべきなのに,ほとんど話題になっていない。これは法学者の怠慢だろう。ここで議論しなくていつするのか。日本学術会議の問題のときもそうだったが,日本の憲法学者の情けなさはここに極まった感じがする。

 また,憲法に抵触するかどうかの判断は誰がどのようにするのか,ということにもつながる。

 

 もう1つは,仮に天皇が政治的な発言をしたときに,どうなるのかということだ。

 誰が判断するのかとも関係するが,天皇を相手に損害賠償請求でもするのか。一歩下がって,国に対して国家賠償請求でもするのか。そのうち本当にそういう人が出てくるかもしれない。

 

 

 

 とにかく,東京オリンピックは即刻中止すべきだ。これ以上は書かない。

 

 

1992年のアバド指揮ベルリン・フィル公演

 古いビデオテープを漁っていたら,1992年にNHKで放送された外国オケの来日公演の入った1本があった。

 クーベリックチェコ・フィル,アバドベルリン・フィルウェルザー=メストロンドン・フィルシノーポリウィーン・フィル。どれも懐かしい,当時はかなり話題となった公演だ。

 その中で,アバドベルリン・フィルブラームス・プロが一番強烈だった。

 

 1992年1月25日にサントリーホールで行われた公演で,前半はムローヴァの独奏によるヴァイオリン協奏曲,後半は交響曲第2番,アンコールにハンガリー舞曲第1番,というプログラムだった。

 ヴァイオリン協奏曲は,その後CD化されて,今でも手に入る。評価の高い演奏だが,個人的にはそれほど思い入れはなく,CDは持っているが聴くことは少なかった。

 

 今回驚いたのは交響曲第2番で,全盛期のアバドの圧倒的な演奏が記録されていた。

 その頃,ブラームスの第2番といえば,カラヤンの1986年盤が愛聴盤で,今でもそうだが,それに比べるとどの指揮者のどの演奏も薄っぺらくて満足がいかなかった。

 1992年当時も,1988年録音のアバドベルリン・フィルによるCDがイマイチだったせいで,あまり本気になって聴いていなかった気がする。

 この演奏は,テレビで放送されたほか,FMでも放送(生中継だったかもしれないが,不明)され,これもデジタル化して残してある。しかし,全然聴くことはなかった。しかし,改めてテレビ中継を観て,圧倒されっぱなしだった。

 まだカラヤンの旗本と言われた猛者たちがたくさん残っており,その顔ぶれを見るだけでもすごいのだが,今ではまず見られないであろう,サントリーホールのステージいっぱいに並んだ倍管編成のベルリン・フィルが圧倒的だ。ステージからこぼれ落ちそうなくらい奏者が並んでいるのだ。

 コンマスはスタブラーヴァとシュピーラー,ヴィオラにはクリスト,コントラバスにツェペリッツ。木管は,クラリネットのライスターこそいないが,フルートはブラウ,オーボエシェレンベルガー。ホルンはハウプトマン。そして一番凄いのが,ティンパニのフォーグラーだ。

 フォーグラーのティンパニは本当に凄い。正確無比。音色が最高。そして凄いパワー。聴いていて何とも気持ちがいい。

 1994年のヨーロッパコンサートの映像がDVDやデジタル・コンサートホールで見れるが,ここではマイクのセッティングのせいか,フォーグラーのティンパニが抑え気味で全く物足りない。開場が狭いのでオケの人数も抑えていて,サントリーホールでのような圧倒的な開放感はない。メンバーも世代交代が始まっていて,カラヤン時代にはいなかったソロ奏者が目立ち始めている頃。

 これに対して,1992年の演奏は,ちょうどアバドがHIPに興味を示して演奏スタイルを変えるなど,停滞期に入る直前で,ライブで時にもの凄い演奏を聴かせることがあった時期の最後期と言っていいだろう。

 

 この日の演奏,前半はCD化されているので,後半もCD化されないだろうか。音源は残ってないのだろうか。

 CD化は無理でも,デジタル・コンサートホールで見られるようにしてもらいたいと切に願う。

 アンコールのハンガリー舞曲も,ノリノリで凄い演奏だった。

 

 

 アバドベルリン・フィルの1990~2000年代の演奏は,ほかにもテレビ中継されたものがたくさんあるので,ぜひぜひデジタル・コンサートホールで見られるようにしてほしいと思う。

 

 

Apple Musicの不具合(Windows)

 Apple Musicでロスレス音源の配信が始まらないと話題になっているようだ。Twitterで「まだだ」と投稿している方たちは,iPhoneなどを使っている方なのだろう。

 残念ながら,こちらはAndroidWindowsで,Appleが公式にロスレスで再生できる対象になってないと言っているので,待ってもしょうがない状況だ。

 

 そのWindowsでの再生だが,曲の再生が途中で止まって固まってしまう現象が起きることが分かった

 ブラウザはFirefoxChromeのどちらでもダメで,同じ曲の同じ箇所で固まるので,Apple Music側の問題だと思われる。Windows版はダウンロード(オフライン再生)はできないし。

 Androidでは問題なく再生できているので,Windows版固有の問題だと思う

 これまで,2つの曲でこの現象が発生している。まだWindowsでは何曲も聴いていないので,かなりの確率になる。

 

 やはり,Apple製品を持っていない人は,Apple Musicはやめた方がいいのだろうか

 

 ギャップレス再生の対応状況も確認してみた。

 公式には,ギャップレス再生に対応していることになっているようだが,確認のために聴いてみた曲では,トラックの変わり目で小さな雑音が出た。

 同じ箇所をAmazon Music HDとSpotifyで聴いてみたところ,音がほんの一瞬途切れたり,雑音が入ったりすることが分かった。なので,Apple Musicではなく,音源を提供している側の問題らしいことが分かった。

 別なアルバムでは,途切れたり雑音が入ったりしないものもあったので。

 

 サブスクの場合,コーデックやビットレートはサービスによって様々なので,どのようにして音源が提供され,聴ける状態になるのか,とても気になるところだ。

 

 

Apple musicはロスレスではなかった(Android&Windows)

 Amazon Music HDを解約して,Apple Musicの3か月無料体験を始めた。

 どうも,無料なのは3か月ではく,90日のようだ。6月1日に契約したところ,8月31日から有料になるというので。1日の違いと言うかもしれないが,ギリギリまで有料に移行するか迷っているひとからすると,この1日は大きい。こういうキャンペーンの告知は正確にしてもらわないと困る。申し込んだ時点で気が付いたからよかったが,トラブルの元だ。

 Apple製品は今まで一度も買ったことがなく,iTunesで数曲買ったことがあるだけなので,Appleを使うのはほとんど初めてといっていい。何となく嫌いだったからだ。

 

 さて,使っていて,聴いている曲の音質が分からないので,不思議に思って調べたところ,「ロスレスオーディオは、iPhoneiPadMacApple TV上にある最新のApple Musicアプリで聴くことができます」だそうだ。

https://www.apple.com/jp/apple-music/

 つまり,AndroidのアプリやWindows(ブラウザ)ではロスレスでは聴けないということが分かった

 Appleの公式発表は見ておらず,様々な紹介記事を見ただけなので,Appleを責めるわけにはいかない。と思ったが,そうでもなかったようだ。

 

 何かの記事で,AndroidWindowsでは48kHz/24bitまでしか対応していないというのを読んだ気がしていたので,ハイレゾで聴けないのは残念には思いつつも,どうぜハイレゾとの違いは分からないだろうから,ロスレスならいいやと思い,そこはあまり気にしてはいなかった。

 しかし,ロスレスでないとすると,Appleは256kbpsなので,話が全然違う。Spotifyより音質的には劣るのだ。

 

 改めていろんなサイトを確認したが,5月27日のmobile ASCIIの記事では,「iOSAndroidで楽しめるロスレスオーディオ」という見出しと,「コーデックの形式はALAC(Appele Lossless Audio Codec)になるが・・・アップルデバイス向けの「ミュージック」アプリ、またはAndroidで利用できる「Apple Music」アプリで楽しめる」という本文の記述がある。

 さらには,機種によってはハイレゾも楽しめそうだとも書いてあった。

https://mobileascii.jp/elem/000/004/056/4056577/

 

 5月19日のPHILE WEBの記事でも,「Android端末でもやはりハイレゾを含むロスレス再生が楽しめる」とあり,独自の取材で分かったことだというので,やはりAppleに騙されたと言っていいと思う

https://www.phileweb.com/review/column/202105/19/1290.html

 

 3か月はこのまま様子を見て,その時点でまたどうするか考えようと思う

 

 

 使ってみての印象は,UIはAmazonより直感的に分かりやすいかなと思った。

 特に,「戻る」ボタンを押したときの挙動が,Amazonだとどこに行くのかさっぱり分からないのだが,Appleはきちんと順に前の画面に戻っていくのがいい。

 クラシック音楽を聴く上で一番問題になる検索のしやすさについては,どちらも一長一短があるなという印象だ。Appleが断然優れている,とは到底言えない。Amazonではすぐに見つけられた曲が,なかなか見つけられなかったりもしている。

 この辺は,それぞれクセがあるので,慣れるしかないところもある。

 

 白が基調のデザインは,黒いAmazonより好きだ。

 だが,有機ELスマホだと消費電力が増えそうな気もする。

 

 聴くことのできる曲については,Amazonでは,アルバムの一部の曲が欠けていたり(レヴァイン指揮ボストン交響楽団の《ダフニスとクロエ》の最後のトラック,カヴァコスベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全集の第5番第1楽章,など),同じアルバムがダブって登録されていたり(それで登録曲数をかせいでいるわけではないだろうが)といったことがあるが,Appleでは今のところそういうのは確認できていない。

 もっとも,これはAmazonがおバカすぎるだけなので,Appleのアドバンテージとまでは言えないだろう。

 

 

mora qualitasの曲数が5,000万曲に?

 2021年5月31日に発売される別冊ステレオサウンド『かんたん、わかりやすい 音楽ストリーミング~サブスク&ライブ配信~再生ガイド』の紹介記事をStereo Sound ONLINEで見ていたところ,「主要ストリーミングサービスの料金プラン&主な機能比較」の表で,mora qualitasの楽曲数が「5,000万曲」と,SpotifyAmazon Music HDと同等の曲数になっていることが分かった!

https://online.stereosound.co.jp/_ct/17454701

 これは,「2021年5月1日現在の情報」だという。

 「mora qualitas 曲数」で検索しても,正式には「非公表」で,「数百万曲」から「500万曲」といった情報しか見つからないので,これが本当だとしたらすごいスクープと言っていいと思う。

 しかし,この記事では,mora qualitasの料金が月額1,980円(税込み)と間違っていたり(税込みだと1,980円×1.1=2,178円が正しい)Spotifyの曲数は7,000万曲以上という情報もある(5月24日配信のSLASH GEAR「結局、Apple MusicとSpotifyはどちらが優れているのか」 https://slashgear.jp/tech/20175/ 参照)ので,にわかには信じがたい。

 信じがたいどころか,5,000万曲と500万曲を間違っているようでは,あまりにひどい。間違いじゃないことを祈る。moraはすぐにでも公式発表をしてほしい。本当なら,三たびmora qualitasへの復帰も考えないといけない。相変わらず歌詞表示には対応していないようだし,料金は高いのだが。

 

 

 それはさておき,Amazon Music HD値下げという情報は聞こえてこないので,来月から3か月はAmazonは一時解約して,Apple Musicの無料体験を使うつもりでいる

 Apple製品ユーザーからするといろいろ不満な点もあるようだが,こっちはApple製品は一つも持っていないので,お試しであれば全く問題ない。むしろ,AndroidWindowsでどのくらい使えるのかの方が大事だ。

 Appleは肌に合わないというか,昔から好きじゃなかったのだが,別にAmazonが好きなわけでもないので,使い勝手がよければそのまま乗り換えるつもりだ。

 Amazonの使い勝手の悪さにも嫌になってきているところだったので,ちょうどいいタイミングだったかもしれない。

 

 

mora qualitasは終わるのか

 Apple Musicが,6月からロスレス音源の配信を追加料金なしで始めるのだという。

 今回発表された内容は,

約7,500万曲の全曲がロスレスでの配信になる

最大192kHz/24bitのハイレゾ音源も提供される

ドルビーアトモスを使った空間オーディオの配信も始まる

・これまでと料金が変わらない(月額980円)

ということだそう。

 空間オーディオはすぐには楽しめそうにないが,その他はかなり魅力的だ。

 

 Amazon Musicもすぐにロスレス/ハイレゾ配信の追加料金をなしにするという発表をしたが,日本は対象外だという。つまり,月額1,980円のままだ。Appleより1,000円も高いことになる。

 しかも,Amazonはいまだにロッシー(AmazonはSD:標準音質と言っている)音源だけのものも結構ある。

 その上,公称曲数は7,000万曲と,Appleより500万曲も少ない

 検索を始めとして,使い勝手はかなり悪い。

 

 いずれ日本のAmazonも追加料金なし(月額980円)になるのではないかと思うが,すぐにやらないとAppleに流れる人が続出するだろう

 音質の比較も気になるところだが,違いが分かる自信はない。とはいえ,Appleのことなので,分かりやすい形でAmazonより音質が良いことをアピールしてくるのではないか。

 まずはAppleの3か月無料体験を利用する間にAmazonは解約し,最終的には使いやすい方にしようかと思っている。

 

 

 AppleAmazonの戦いはさておき,気になるのはmora qualitasの方である。

 曲数が増えたとの話も聞かないし,使い勝手が良くなったとの話も聞かない

 料金は月額2,178円と断然高い

 音質の良さは多くの人が認めるところだが,そうそう違いが分かるレベルだろうか。

 

 今回のAppleの動きがmora qualitasにとどめを刺すのではないかと危惧してやまないところだが,何とか本気を見せてほしい。残された時間は,少ない

 

 

ホセ・クーラ指揮のラフマニノフ交響曲第2番

 ホセ・クーラがシンフォニア・ヴァルソヴィアを指揮して2001年に録音したラフマニノフ交響曲第2番が配信で復活していた。

 

 Amazon Music HDではハイレゾ(24bit,96kHz)で配信されている。Spotifyでも聴けるが,mora qualitasにはないようだ。

 

 このCDは,テノール歌手のクーラが指揮者として交響曲を録音した初めてのCDとして,その演奏の素晴らしさもあり話題になったものだ。

 実際,演奏はこの曲のCDのベストと言っていい出来で,非常に熱く,隅々まで血が通っている。クーラはこの曲が大好きだそうで,1音たりとも愚かにせず,きっちり聴かせようという意志が強く感じられる。特に第4楽章は圧巻だ。すさまじいエネルギーで前進し,圧倒的なクライマックスを迎える。

 

 このような名盤にもかかわらず,発売されたCDは盤質が最悪で(2000年代にもかかわらず),聴けなくなってしまったという報告が多数見られる。実際,手許にあるCDも,今は第1楽章しか認識されない。かろうじてダメになる前にリッピングできたので聴くことができていたが,何とも残念な状況であり,しかも随分前に廃盤になっていた。

 

 本当にたまたま見つけたのだが,サブスクは意外と聴きたい曲が配信されていなかったりして,特に,昔聴いたことがあってまた聴きたいと思って探しても,見つからないことがほとんどなので,珍しく満足できた。

 

 

 また別にまとめて書こうと思っているが,やはりAmazon Music HDはいろいろ使いづらいことが多く,特にスマホタブレットで顕著である。

 使いづらいというより,分かりにくいと言った方がいいのかもしれない。

 さらに,曲の検索がしづらい。配信されていても,なかなかたどり着けないことが多い。クラシックの場合,同じ曲の聴き比べをしようと思うと,これがまた難しい。曲名で検索して一気に出てくれば楽なのだが,日本語で探したり,英語で探したり,演奏者名で探したりと,いろんな方法で検索しないと,聴きたい演奏にたどり着けないのだ。

 

 また,相変わらずmora qualitasは曲数が絶望的に少ないようだ。一気に10倍以上に増やしてくれないと,話にならない。

 SpotifyApple Musicがハイレゾに参入するという噂もある中,このままだと消滅してしまうのではないか。そうなるのは非常に惜しい。何とか生き残ってほしい。いつでも戻る準備はできているので,とにかく曲数を増やしてほしい。

 

 

レコード芸術2021年4月号

 「レコード芸術」の2021年4月号の特集は,「進化するショパン」。

 「今世紀に入って,新校訂譜の浸透,楽器や奏法をはじめとする歴史的情報に基づいたアプローチの研究が進」んだことから組まれた特集だという。

 まさにそのとおりだし,ショパンが特集で取り上げられたのは記憶にないくらいなので,タイムリーな企画だと思う。

 大いに期待したが,果たしてまたまたそれは大いに裏切られた。

 

 まず,「新校訂譜の浸透」という点については,もちろん触れられてはいるが,さらっと流して書いてある程度。

 読者としては,何か有名な曲と演奏(CD)を取り上げて,具体的にどういう違いがあるのかといったことを知りたいところだが,そんな記事はなし。

 

 「楽器や奏法をはじめとする歴史的情報に基づいたアプローチ」についても,仲道郁代さんのインタビューの中で多少ふれられていたり,NIFCレーベルの紹介でこういうCDがあると紹介されている程度。

 これもやはり,有名曲を取り上げて具体的にどこがどう違ってくるということを解説してほしいが,そういう記事はなし。

 楽器についても,今のピアノとの違いについて,構造や音色,奏法などいろんな角度からの分析ができると思うのだが,ほぼ説明はなし。

 

 そして,例によって執筆者任せなのがバレバレで,内容がかなりダブっている。

 例えば,「ライヴ録音でたどるショパン・コンクールの受賞者たち」と「ショパン演奏の名手たち そのピアニズムの系譜」の後半は内容がかなり共通しているし,ほかの記事ともダブる部分は多い。

 さらにひどいと感じたのは,各記事で紹介されている名盤で,ポリーニの12の練習曲が3回も出てくること。ほかにも複数出てくるCDがある。こんなのは見たことがない。

 

 結局,またまた企画倒れで中身の薄い特集になってしまった。

 編集者の力量の問題だと思う。

 

 

 新譜月評で取り上げられた中での注目盤はベルリン・フィルマーラー交響曲全集だと思うが,これについては3月号の「先取り!最新盤レビュー」で,広瀬大介氏が2011年にアバドが指揮した《大地の歌が入っていないことを嘆いていた。これは,アバドベルリン・フィルのファンは当然思ったことだと思う。このときの演奏は非常に素晴らしいもので,NHKで放送されたし,デジタル・コンサートホールでも見ることができる。

 アバドは《大地の歌》をCD録音していないので,そういう意味からも,この全集の発売に合わせてCD化することには大きな意味があったと思う。この全集は高くてなかなか手が出ず,買っていないが,アバドの《大地の歌》が入っていたら,すぐに買っていたかもしれない。そのくらいの名演だった。

 それがなぜCD化されなかったのか。

 カウフマンがノットとCDを出しているからとか推測はできるが,ファンが当然疑問に感じるようなことを取材して明らかにするのがレコード芸術のような雑誌の使命なのではないか。

 3月号で広瀬氏が疑問を呈されたのだから,取材して,4月号で答えるべきだった。

 

 そうでなくても,もうずっとそうだが,インタビューにしても海外楽信にしても,掘り下げられた濃い内容のものは稀になってしまっている。

 もっと突っ込んだインタビューや取材をした結果を読ませてほしい。

 

 

 ついでに,ベルリン・フィルマーラー交響曲全集について少し書いておく。

 正直,今,この中でお金を出しても欲しいと思っているのは,ペトレンコ指揮の第6番だけだ。演奏は実に素晴らしい。一つだけ気に入らないのは,第2楽章をアンダンテ,第3楽章をスケルツォとしていること。

 これは,ペトレンコもかなり悩んだのではないかと思われる。というのも,第1楽章と第2楽章の間に非常に長い間を置いているから。やはり,曲想からは,第2楽章にスケルツォを持ってくる方がしっくり来ると思っているからだと思う。とはいえ,最新の研究も無視できず,というところだろうか。

 今後また研究が進んで,やはり第2楽章はスケルツォマーラーの意図するところだった,なんてなることもあるかもしれない。そうなったら,第2楽章はアンダンテだと言った研究者の罪は重い。

 個人的には,スケルツォ-アンダンテの順で演奏する方がいいと思う。そして,第1楽章と第2楽章,第3楽章と第4楽章はアタッカで演奏するのがいい。

 特に,あのアンダンテの後,すぐに第4楽章が始まると,何とも言えない感じがする。スケルツォの後では,ある程度間を置かないとしっくり来ない。

 最近の録音でも,クルレンツィスは,スケルツォ-アンダンテの順で演奏している。やはり,そうしないと違和感を感じる演奏家は多いのではないかと思う。

 かつて,諸井誠氏は,第1楽章とスケルツォは実質的に一体であるとして,3部構成のシンメトリー構造になっていると指摘していた。そのとおりだと思う。実際に聴いてそう感じるのだ。シンメトリカルな3部構成という構想と,古典的な4楽章構成という構想のいわば妥協の産物がこの交響曲だったのではないかと思う。おそらく,マーラーもどういう順番にしたらいいか,かなり悩んだのではないかと思う。もし,マーラー自身が何度もこの曲を演奏する機会を得ていたら,最終的にはスケルツォ-アンダンテの順にしたのではないかと思う。

 

 もう一つ,ハイティンクの第9番について書いておく。ハイティンクは,1980年代の終わりから1990年代にかけて,ベルリン・フィルマーラー交響曲全集を作ろうとしていた。それが,フィリップスにリストラされ,第8番,第9番,大地の歌の3曲を残して頓挫してしまったのはよく知られているところである。

 今回,全集に入れられた2017年の第9番は,その穴の一つを埋めるものになるとの期待も大きかったと思われる。

 しかし,聴いてみて,そうはならなかったと思った。

 フィリップスに録音した第1番から第7番までは,非常に素晴らしいできだった。特に第1番,第2番,第5番,第6番がお勧めである。

 やはり,構成がしっかりした曲の方ができがよく,ある意味ハチャメチャな曲である第3番と第7番は面白くなかった。第4番も真面目すぎて今ひとつ。

 今回の第9番はその頃からだいぶ時間が経っており,同列に語れる演奏では全くなくなっていた。

 まず,ベルリン・フィルがすっかり変わってしまっている。ハイティンクの非常に遅いテンポを完全に持て余している。音の重量感がかなり減ってしまっているのでなおさらだ。

 ハイティンクも,20年前ならもう少しテンポも速く(特に中間楽章),ダレずに演奏できたと思うが,今回は完全にダレてしまっている。第3楽章など,演奏時間ではクレンペラー並みなのだ。それを持たせるだけの力が,もはやハイティンクにもベルリン・フィルにもなくなっていた。

 かえすがえすも,あの当時に全集として完結しなかったことが残念でならない。

 

福島県の奇妙な新スローガン

 最近,福島交通のバスの正面に,なんて書いてあるのか読めない垂れ幕が掛かっているので,何かと思ったら,福島県の新スローガンだという。

 「ひとつ、ひとつ、実現する ふくしま」

というのだそう。

https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/01010d/jitsugensuru-fukushima.html

そのデザインからは,何て書いてあるか全然読めない

そして何より,意味不明である。

 

デザイン的には優れているのかもしれない。

だが,役所のスローガンとしてはどうなのか。

非常に疑問だ。

 

ちなみに,白黒コピーしたら,完全に読めない

ユニバーサルデザインに配慮されているのだろうか

その道の専門家の意見を聞きたいところだ。

 

 

Amazon Music HDレビュー①

 mora qualitasからAmazon Music HDに乗り換えて1か月以上経った。

 曲数があまりに違うので比較にならないくらいなのだが,そのつもりで聴きたい曲を探すと,意外とAmazonにもないアルバム/レーベルが多いのが分かった。

 CDと違って発売日がはっきりしていないので,いつ配信されるのかもさっぱり分からず,最新録音がすぐ聴けるとは限らないことも分かってきた。

 加入したところ,HDは90日無料キャンペーン対象だったのにはひどく得した気がしたが,だんだん問題点・不満点も出てきた。

 順次書き残しておこうと思う。

 

1 ハイレゾが意外と少ない

 Amazon Music HDの場合,いわゆるハイレゾ(音質は様々)の「ULTRA HD」,CD音質の「HD」,256kbpsの不可逆圧縮である「SD」の3種類があり,ULTRA HDとHDが聴けるのがポイントなのだが,意外とSDの曲が多く,ULTRA HDが少ないというのが印象である。

 ハイレゾ音源がある曲の場合,mora qualitasだとハイレゾとCD音質の両方を選んで聴けるのがほとんどだが,Amazonではどちらかしかない。

 

2 1つのアルバム内でULTRA HDとHDが混在

 これはかなり驚いたのだが,同じアルバム内でULTRA HDの曲とHDの曲が混在しているものが結構ある。

 曲の人気度とは関係ないようなので,どういう基準でそうしているのか分からないのだが,かなり不思議だ。

 やはりAmazonが「音楽」を大事にしておらず,「商品」としか考えていないことの証拠の一つだと思う。

 例えば,ラトル指揮ベルリン・フィルマーラーの復活(2種類がアップされているうちの片方)では,第5楽章が複数のトラックに分けられているので全部で11トラックに分かれている(第5楽章が5~11トラック)が,このうち2と6~11トラックがHDで,ほかはULTRA HDなのだ。

 つまり,第2楽章と,第5楽章の途中から最後までがHDなのである。

 第5楽章のULTRA HDとHDの境目を注意して聴くと,ノイズこそ入らないものの,明らかに音が途切れている。ライヴ録音で,会場ノイズが結構大きいので分かるのだ。CDと聴き比べてみたが,間違いない。

 ちなみに,アップされているもう片方は全部ULTRA HDになっている。この辺も謎だ。なお,この音源も,トラック5と6の間で一瞬音が途切れる。ということからすると,HDとULTRA HDの境目のギャップレス対応がどの程度なのかは,この曲からははっきり分からない。

 

3 ギャップレス再生が不完全

 Amazon Music HDはギャップレス再生に対応しているとアナウンスされている。

 インターネットの記事でも,そういう書き込みが複数確認できた。

 しかし,よく聴くと,ギャップレス再生が不完全であることが分かった。

 ワーグナーなど切れ目のないオペラを聴くとすぐに分かるが,トラックの境目で小さいノイズが入るあるいは,音が一瞬微妙に小さくなる

 mora qualitasやspotifyではこういうことはなかったので,ギャップレス再生は技術的に不可能ではないはずだ。

 ここからも,Amazonの音楽に対する姿勢が分かる気がする。音楽を大事にしていない。

 

(続く)

 

 

 音楽を大事にしているかということで言うと,明らかにmora qualitasの方が上だと感じる。

 とはいえ,曲が少ないのは何ともしがたい。サブスクは,聴きたい曲が聴けてなんぼなのだから。

 早くソニーに本気を出してもらいたい。そうすればすぐmora qualitasに戻るだろう。