今年のニューイヤー・コンサートはリッカルド・ムーティの指揮だった。
はっきり言って,何の期待もしていなかった。ムーティは昔から聞いているが,どうもよく分からないからだ。むしろ,ベルリン・フィルとの録音の方がいいものがあったと思っている。モーツァルトのレクイエムとか,ブルックナーの4番とか。
ムーティは5回目ということで,もっと出ているかと思ったが,まだ5回目なのだった。
録画していたのを暇つぶしに見始めたら,これが予想外にいい演奏だった。
ムーティの表現に特別何かあるという感じではないのだが,ウィーン・フィルがよかった。久しぶりに,しっかりしたいい音のぎっしり詰まった音がしていた。
何より,楽団員の表情がよかったと思う。リラックスしていてもダレてなく,ムーティを心から信頼しつつ,音楽に専念している様子が感じられた。
ゲストのヘーデンボルク・直樹さんが,ムーティの音楽について「気品がある」とおっしゃっていたが,そのとおりだなと思った。こういう言葉をそのとおり素直に感じられることは珍しいのだが,今回はそうだった。
こういうことがあるから,音楽を聴くのは楽しい。