ニューイヤー・コンサート2022と《こうもり》序曲の謎

 今年,2022年のウィーン・フィル,ニューイヤー・コンサートはバレンボイムの指揮だった。

 例年以上に,有名曲が少なかったように思う。曲目は指揮者が決めるのではなくウィーン・フィル側で決めるらしいので,バレンボイムのせいではないのだろうが,それにしても,という気がする。有名にならないのには,それなりに理由があるのだ。

 バレンボイムの指揮には全く期待していなかったので,まだ全部見て(聴いて)いないのだが,一部の曲を聴いただけで,もう聴かなくていいや,と思っている。

 有名曲の方が分かりやすいので,まずは《こうもり》序曲を聴いたが,案の定だった。なぜこの人が指揮者としてもてはやされているのか,全く分からない。アンサンブルは悪いし,リズムは悪いし,元気はないし。音に力がない。相変わらず,腕が硬い。ニューイヤー・コンサートなので,オケに任せて振らない場面も多かったが,それでもやはりつまらない。

 ピアニストとしては最高だったのに。

 そのピアノも,さすがに最近はテクニックの衰えが目立って,聴くのが辛いことも多くなった。昨年出たベートーヴェンソナタ全集は,かなり聴くのが厳しかった。1980年代の全集はあんなに素晴らしかったのだが。

 

 

 さて,《こうもり》序曲なのだが,冒頭でヴァイオリンの音が変わっているところがあり,音が外れているように聞こえるのだが,話題になってないように思う。

 ニューイヤー・コンサートでこの曲が取り上げられたのは,1989年のクライバーの後は2002年の小澤征爾まで間が空くのだが,この間にウィーン・フィルの使っている楽譜が変わったようだ。

 小澤征爾が振った2002年のときのCDでは[0:08]のところである。クライバー以前(カラヤンアバドなども)では違和感はないのだが,小澤以降の演奏では,音を外しているかのように聞こえるのだ。おそらく,自筆譜などを検討した結果なのだろうが,違和感しかない。ベートーヴェンの第九の第1楽章第2主題の音の問題にも通じるように思う。

 1987年録音のアーノンクールの全曲盤では,既に新しい方(と言っていいのか分からないが,違和感がある方)の音になっている。

 小澤のときは過渡期だったのか,「ほんとにこの音でいいのか?」といった感じで,萎縮しているかのような中途半端な弾きぶりだったが,今年はもう慣れたのか,みんな確信を持って弾いているように聞こえた。

 しかし,何度も言うが,聴く方からすると違和感しかないのだ。

 音楽学的には新しい方が正しいということになっているのかもしれないが,音楽的にはおかしいと思う。だからこそずっと古い方の音で演奏されてきたのだろう。

 楽譜から,何小節目の何の音,と特定して検索すれば何かしら情報が出てくるのかもしれないが,ざっと調べたところではそれらしい記述は見つからなかった。

 レコ芸相談室もなくなってしまったし,相談できるような詳しい人も身近にいないので,このもやもやはずっと続きそうだ。