高橋幸宏さんのこと

 高橋幸宏さんが亡くなった。

 YMOのメンバーの中では一番好きだった。

 YMOに目覚めたのは,散開コンサートをNHKで見てから。1983年の大みそかだった。夕方から「YMOスペシャル」として放送され,録画して数え切れないほど見た。格好良かった。

 曲の合間に,3人のメンバーそれぞれのVTRがあって,これがとても面白かった。いや,坂本さんのだけは全然面白くなかったが。

 細野さんのは一番面白かったが,得体が知れなかった(伊武雅刀さんのことも当時は知らなかったし)。坂本さんのはひたすら気持ち悪くて怖かった。デヴィッド・ボウイ樋口可南子との対談は,何を言っているのかさっぱり分からなかった。

 幸宏さんが一番まともで,しかもおしゃれだった。

 散開コンサートの演奏も最高だった。やはり,幸宏さんのドラムに一番魅了された。歌はもちろんいいのだが,とにかくドラムが格好良かった。そのころは,演奏のことはよく知らなかったが,途中に幸宏さんと交代してドラムを叩いていたデヴィッド・パーマーのドラムとは明らかに音が違う。パーマーのドラムは剛直で正確無比だが,幸宏さんはもっとエモーショナルで,言ってみればエロかった。ドラムの音が人によってこんなに違うというのは驚きだった。終わりの方でまた幸宏さんがドラムに戻って,「TECHNOPOLIS」が始まるところが最高に格好良かった。

 その頃使われていた電子ドラムがまた格好良かった。今はライヴで電子ドラムを使う人はほとんど見ないが,あの頃はあれが最先端だったのだ。薄っぺらい板を叩くのがすごく格好良かったのだ。そして,そこに未来を感じることができた。電子ドラムを見なくなって,寂しい。ドラムマシンは普通に使われているのに。時代は巡るので,また流行るかもしれない。流行ってほしい。

 そういえば,同じく電子ドラムで一世を風靡した,C-C-B笠浩二さんも昨年末に亡くなったばかり。何かつながりを感じる。

 

 散開コンサートは,「AFTER SERVICE」としてCD化されているが,NHKで放送されたのはこれとは別の日の演奏で,曲によってはかなりアレンジが変わっている。分かりやすいのは「TONG POO」と「SOLID STATE SURVIVOR」だろう。このうち「TONG POO」はかつて「YMO伝説」(VHS・LD・DVD)に収録されて商品化されていたのだが,「SOLID STATE SURVIVOR」は商品化されていない。「AFTER SERVICE」と違って,冒頭に幸宏さんのドラムの一撃があり,そこが格好良いのだ。何とか商品化されないものだろうか。

 ぜひ,YMOスペシャル」で放送されたドキュメントを含めた完全版にして,ブルーレイで商品化してほしい。待っている人はたくさんいるはずだ。