2023年1月20日(金) 18時開演
福島市音楽堂
1.シューベルト:《ロザムンデ》序曲Op.26,D.797
3.シューマン:献呈(リスト編) (アンコール)
5.アザラシヴィリ:ノクターン (アンコール)
古海行子(ピアノ) (2,3)
横浜シンフォニエッタ (1,2,4,5)
指揮:山田和樹 (1,2,4,5)
16時からシューマンのリハーサルを見ることができた。開場に入るとまだ始まっておらず,古海さんがピアノの脇に座っているところ,男の人が何かの曲をガンガン弾いていて,調律師にしてはおかしいなと思って見ていると,山田さんだった。
遠かったので何を話しているのかは分からなかったが,お互い手慣れた感じで,30分ほどでリハーサルは終わった。時間からすると,ブラームスはその前にリハーサルしていたのだろうか。
元々の曲は,シューマンとブラームスの2曲だけだったが,1曲目に《ロザムンデ》序曲が追加された。シューベルトは苦手な方なのであまり聴かない曲だが,序奏部を早めのテンポで開始し,その後もダレることなく進め,飽きずに聴くことができた。
シューマンのピアノ協奏曲は,シューマンの中では交響曲第2番と並んで好きな曲。古海さんはショパンコンクールでの演奏をYouTubeで見ていたが,思ったより小柄。でも演奏は十分パワフル。オケと息の合った演奏をしていたが,この日がこの曲を演奏するのは初めてだったのだそう。まだ24歳と若いが,華があってしかもしっかりしているように見えたので,今後が楽しみ。
アンコールはシューマンの《献呈》。アンコールの定番のような曲だが,とろけるよう美しさにうっとり。曲が終わるとすぐ「ブラヴォー」と叫ぶおじさんがいたが,気持ちは分かる(ただし,相手が女性なので「ブラヴァ!」と叫ばなければならない。下手に叫ぶと恥をかく)。
後半が始まる直前に,山田さんがマイクを持って登場。海外と行き来しているので平日のこの日しか来られなかったことを詫び(もちろん,詫びる必要はないわけだが,ご愛敬),横浜シンフォニエッタ(当時はTOMATOフィルハーモニー管弦楽団)を自ら立ち上げた当時の苦労話(自分で会場や楽譜の手配,楽器運びなど全部やったそう)や,古海さんがシューマンの協奏曲を弾くのは今日が初めてであることなどを話し,最後に楽団員のうち福島県出身者を紹介してくれた。
ブラームスの交響曲第2番は,ブラームスの中でも一番好きな曲で,交響曲の中でも好きな曲のベスト5には入る。特に第4楽章は,気分を上げたいときにいつも聴く曲だ。
解釈自体はオーソドックスで,気持ちよく流れていくので,終わるまですごく短く感じた。特に,第1楽章の最後の野太いホルンのソロがよかった。
第4楽章の最後は福島市音楽堂では狭かったか,音が飽和してカオスになってしまっていた。
山田さんは,童顔で幼く見えるため,まだまだ若いのかと思ったら,もう43歳(すぐ44歳になる)。意外に体は大きくてがっしりされている。そして何より,世界をまたに掛けて活躍していることからくるのであろう風格が漂っていて,ただ者でないオーラ(カリスマ性と言っていいのだろう)が出ているのがよく分かった。これからますます飛躍しそうだ。
自身が立ち上げた横浜シンフォニエッタとは,家族のような親密さが見えて心地よかった。チラシにはかなり編成が小さく古典配置の写真が掲載されていたが,この日は通常の配置でチェロが前。第一ヴァイオリンは10人,コントラバスは4人。ホームページでメンバー表を見るとかなり少ないので,エキストラが結構入っていたということか。ヴァイオリンの対向配置はいいがコントラバスが向かって左にいるのはどうも落ち着かない気がするので,通常配置で安心して聴けた。
ヴァイオリンのメンバーは,第1と第2が固定ではないようで,前半に副コンサート・ミストレスの位置にいた方が,後半は第2ヴァイオリンに座っていた。
小規模の編成だが,HIPではなく,ヴィヴラートをたっぷりかけたオーソドックスな演奏スタイル。変な癖がないので曲に集中して聴くことができた。一つだけ特徴的だったのは,どの曲も最後の和音を伸ばす際にちょっと弱めて終わるところ。山田さんの癖か,それだけはあまり好きではなかった。
満員とはいかなかったのがもったいない,とても満足したいい演奏会だった。また福島に来てほしい。