牛田智大ピアノ・リサイタル2018(福島市音楽堂)

 今日(2018年9月30日),福島市音楽堂でピアノスト牛田智大のリサイタルがあり,聴いてきた。いい演奏会だった。

 

牛田智大 ピアノ・リサイタル 2018

福島市音楽堂

2018年9月30日(日)

開場:14時30分

開演:15時

(プログラム)

1.リスト:超絶技巧練習曲集S.139~第1番

2.プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第7番変ロ短調Op.83《戦争ソナタ

3.ラフマニノフ:絵画的練習曲集Op.33~第8曲

4.ラフマニノフ:ピアノ・ソナタ第2番変ロ短調Op.36(改訂版)

 (休憩)

5.ショパン24の前奏曲Op.28

6.バッハ(ブゾーニ編):シャコンヌ

7.プーランク即興曲第15番《エディット・ピアフを讃えて》

(アンコール)

1.シューマン子供の情景Op.15~第7曲「トロイメライ

2.ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調Op.27-2第1楽章~ハッピーバスデー

3.バダジェフスカ乙女の祈り

 

 当初の予定では,ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第31番が演奏される予定だったが,変更になった。何と変更になったのか,KFBのホームページに出ていたはずなので,演奏会終了後に見たら,既にページが消されていて,きちんと確認できなかった。そんなに慌てて消さなくてもいいのに。

 

 今日は,台風第24号が接近していることもあり,駐車場が混むだろうと思って早めに行ったのだが,14時過ぎには既に音楽堂周辺の駐車場はいっぱいで,福島競馬場北東に設けられた臨時駐車場に行くよう案内された。そちらはまだガラガラで,余裕で止められたが,音楽堂まではちょっと歩かないといけない。

 寄り道しながら,開場後の14時30分過ぎに音楽堂に着くと,外まで人があふれていて,なかなか入れなかった。人気のほどがうかがわれた。

 中に入ると,9割くらい席が埋まっていただろうか。珍しいかもしれない。

 バルコニーにテレビ局のカメラが入っていたので,主催者のKFB(福島放送)が中継でもするのか(それでカメラ1台というのはおかしいのだが)と思ったら,アナウンスがあり,NHKが取材しているとのことだった。そのうち特番があるのだろうか。

 そして,開場直前に客席から「バタッ」と大きな音がして,何かと思ったら,観客の1人が倒れたのか足を踏み外したのか,腕に怪我をしたようで,腕を押さえながら出て行った。

 そのせいかどうか分からないが,5分以上遅れて開演。

 

 CDデビューした頃は,写真で見るといかにも子供で,「12歳でCD出すんだ~」くらいにしか思っていなかったが,18歳になった今は,すらっとしたイケメンになっていた。

 最初のリストは,曲名どおりまさに「前奏曲」として始まり,終わっても立ち上がらずに(拍手させずに)そのままプロコフィエフに突入。

 福島市音楽堂の残響にとまどっているような感じがしないでもなかったが,プロコフィエフらしい轟音を轟かせた快演だった。第3楽章は,残響で曲が分からなくならないギリギリのテンポを取ったのか,ほんとはもっと飛ばせる,飛ばしたいんじゃないかという感じもした。

 プロコフィエルの後は立ち上がって拍手を受け,袖には下がらずにそのままラフマニノフの練習曲を披露。この後,一旦袖に下がる。

 休憩前の最後の曲は,ラフマニノフソナタ第2番。短い改訂版ということもあって,一気に聴かせてくれた。これも快演。

 休憩後はショパン前奏曲。24曲を切れ目なしに演奏。ダイナミックスの幅が大きい若々しい演奏で,あっという間だった。そしてそのままアタッカでシャコンヌへ。ピアニスティックな迫力ある演奏だった。

 プログラムの最後はプーランク即興曲第15番。初めて聴いたが,牛田君の名刺代わりの曲のようだ。しっとりした美しい曲。

 

 その後,マイクを持って今日のリサイタルへの思いを話してくれた。

 福島県内でのソロ・リサイタルは初めてで,今日はいわき市の祖父母やいとこが来てくれているとのこと。

 そして,聞き間違いでなければ,2016年7月26日に亡くなった,師匠である中村紘子さんの死後初めてのリサイタルだという。そして,この日のプログラムは,中村さんの生前最後に開いたリサイタル(チョ・ソンジンとのジョイント)のプログラムを,予定どおりの形で再現しようとしたものだったとのこと。

 また,いとこは今日が誕生日だとか。

 丁寧に聴衆に語りかける様子は,まさに好青年という感じだった。

 

 そのまま,マイクを置いてアンコールを3曲。

 まずは,シューマントロイメライ。涙が出そうになるほど,とっても美しい演奏だった。

 そして,ベートーヴェンの《月光》ソナタの第1楽章が始まったので,アンコールでやるには長すぎるのでは?と思っていると,途中から月光ではなく,ハッピーバースデーの曲に。短調でやるのは変かなという気もしたが,いとこヘのプレゼントだろう。会場も大いに沸いた。

 最後は《乙女の祈り》。プロが真面目に演奏するのは珍しいかもしれないが,聴衆を楽しませようという気持ちが見えたし,きっと牛田君も大好きなのだろう。

 

 一部,マナーの悪い客がいて,うるさかったりしたが,大いに盛り上がった演奏会だった。これからも応援したくなった。

 演奏会終了後のサイン会には,多くの人が並んでいた。

 ぜひ,定期的に福島で演奏会を開いてほしいと思った。