新時代の名曲名盤プラス①

 2022年9月号の「レコード芸術」の特集は,「新時代の名曲名盤プラス ①アルベニスからハチャトゥリアンまで」。

 2020年5月号から2022年5月号まで続いた「新時代の名曲名盤500」の補遺といった形で,100曲を2回に分けて掲載するらしい。完結は今年の11月号になる。

 

 新時代の名曲名盤500のときに,既にこの手のランキングは破綻していると指摘したが,「プラス」の方は,ややマイナーな曲が並んでいることもあり,まだギリギリランキングとしての体裁を保っているといっていい結果となっている。まあ,名盤が少ない曲ばかりだから,ということになるのだろう。

 

 ややマイナーな曲ばかりかと思いきや,「500」に入っていなかったのが意外な曲も入っていた。例えば,ヒンデミットの《画家マティス》。これは「500」に入っていても良さそうな曲の最たるものではないかと思った。ところが,手許にある過去の「名曲名盤」シリーズを見たところ,《画家マティス》は1つも入っていなかった。前回の「最新版 名曲名盤500」で《ウェーバーの主題による交響的変容》が入っているだけで,ヒンデミット自体,完全に無視されているようなので,音楽之友社的には,ヒンデミットの曲は名曲枠には入っていないようだ。

 その《画家マティス》の1位になったのは,2000年録音のサロネン/ロス・フィル盤。早速Amazon Musicで聴いてみたが,はっきり言って,1位に選ばれるほどの演奏とは思えなかった。線が細く,音は洗練されておらず,今一つパッとしなかった。しかし,サロネン盤は《ウェーバーの主題による交響的変容》でも1位になっている。2曲とも,圧倒的とは言えないが,2位とはそれなりに差がある。やはりこういうのは,選者次第ということなのだろう。

 

 このサロネンヒンデミットは,Amazon Musicですぐ聴くことができたのだが,実は,「廃盤」扱いとなっている。今回の「プラス」で非常に目立つのが,この「廃盤」なのである。「廃盤」と「海外盤」が非常に多い。

 数えてみると,1位だけしか数えていないが,50曲の1位のうち,「廃盤」は10曲,「海外盤」は19曲もあった。それだけ,国内のクラシックCDの需要が落ちているということなのだろう。しかし,サロネンヒンデミットのように,「廃盤」でもサブスクで聴けるものは多い。こうなってくると,レコード芸術ももっと配信にシフトしていかないと置いてかれて行ってしまうと思う。配信でいくらでも聴けるのに,「廃盤」と表記するだけでは,無責任だ。

 既に,物理メディアでは通常のCDでしか販売されていないのに,サブスクではハイレゾで聴けるものがたくさんある。最新録音は,ほとんどがハイレゾだ。こうなってくると,ますますCDを買う意義がなくなってしまう。

 レコード芸術のような雑誌も,それに対応した内容に変えていかないといけないだろう。