カラヤンの遺産1982~1988

 前にも書いたとおり,カラヤンが1980年代にテレモンディアル社で制作した映像作品のうち7タイトルが初めてブルーレイ化された。

 

 まだ買っていないのだが,「レコード芸術」8月号150ページ~153ページに,西村祐氏の記事が出た。

 

 それによると,今回のブルーレイ化の一番のポイントは,bシャープという会社がによる音声の「リ・レコーディング」だそう。大阪でのライヴを除く6タイトルにこの「リ・レコーディング」の音声が入っているとのこと。

 ごく簡単に言うと,録音会場でオリジナルの音声を大音量で再生し,それを改めて録音し直すというもの。

 ありそうでなかったやり方だが,クラシック以外の世界なら,あらかじめ録音していたものを会場で流して,それを含め映像収録するというのは普通にあることなので,珍しい発想ではないのかもしれない。しかし,クラシックでは初めてではないか。

 大阪のライヴも,ホールは今もあるのだからやってもらいたかった。もっとも,ほかのタイトルと比べて映像と音声のクオリティが段違いに低いので,そっちの方が理由だったのかもしれない。

 

 残念ながら,西村氏の記事では,「実際に比較してみると,豊かだが混濁しないホール・トーン(bシャープのスタッフはドライと感じていたらしい)はそのまま,楽器そのものの音にはフォーカスが定まり,とても自然でワイルドな音になっている」と簡単なコメントがあるだけで,個々のタイトルごとの評はない。

 映像も,「LDマスターからアップ・コンバートされ,とても見やすく,それでいて現代風のクリアなものではない,陰影に富んだ美しさを持つ。全体に明度は高くないけれど,カラヤンの映像に対する美学をふんだんに味わうことができる仕上がりである」と,こちらもブルーレイ化でどのくらい画質がアップしたのか,詳しい比較がされていないのが残念。

 ぜひ,オーディオのページでオーディオ評論家の方による詳しい記事を載せてほしい。

 

 それにしても,ソニーはどのくらい力を入れているのだろうか。レコード芸術の広告では「日本独自企画」とあるが,音声については「ベルリンのbシャープ社によるリマスター音源」も収録と書いてあるだけで,リ・レコーディングの説明は一切なし。

 ソニーのホームページでは簡単な説明があるが,どれだけ画期的なものかといった力の入った説明ではない。

 

 

 今年はカラヤン没後30年,生誕111年ということで,昨年あたりからライヴ音源がCD化されている。

 日本では,キングレコードからNHKが1960年代の来日公演時に収録したものを中心にCD化している。とても買い切れないのが残念,音もそれなり。

 

 個人的には,1970年代後半から1980年代のライヴのCD化をぜひぜひお願いしたい。いまはほとんど手に入らないと思うが,以前は1980年代のライヴがかなりの枚数CD-R盤で出ていた(海賊盤と言っていいのだろうが)。

 おそらくFM放送されたものなどをCD-Rにしたものなのだと思うが,ものにもよるが,かなり高音質のものもあって,放送局に音源が残っていれば,最新録音にも負けないかなり高音質のものが期待できるはず。

 映像も,NHKやZDF,ORFなどに残っていないだろうか。

 特に日本だと,1960年代のカラヤンが好き,という方が多いのかもしれないが(そういう方々は,年齢層も高いし,購買力もあるのだろう・・・),最晩年の演奏もお願いしたい。