北方謙三「岳飛伝」読了

 昨日,「岳飛伝」をやっと読み終えた。

 

 第8巻まで読んだところで一度感想を書いたが,そこで書いたことに特に変わりはない。

 とにかく長かった。疲れた。が,まだ「盡忠報国」が残っている。早く読まないと。

 

 「水滸伝」を読み始めたのは,確か2007年の夏頃。そこから,14年たったことになる。「水滸伝」は3回,「楊令伝」は2回読んだ。

 最初の「水滸伝」は,一気に読んだような気がする。確か,文庫版の刊行に追いついてしまい,途中からは図書館で借りて読んだはず。その後,図書館で借りて「三国志」を読み,1年後くらいにもう一度「水滸伝」を読んだ。

 さらに,「楊家将」,「血涙」を読んだが,「楊令伝」を読み始めたのは,だいぶ間が空いてからだった。そもそも,文庫版は「水滸伝」の19巻が出てから3年くらい間が空いているのだから,しょうがない。

 「楊令伝」もまた文庫版の刊行に追いついてしまったのだが,このときは図書館で借りたりはせず,途中何ヶ月か間を空けて,後半は一気に読んだ。そして,既に「岳飛伝」の1巻は単行本で出ていたので,これだけ図書館で借りて読んだ。

 それから「岳飛伝」の文庫版が出るのを待ったが,出る気配がないので「水滸伝」をもう一度読んだ。

 しかし,「岳飛伝」はなかなか出ず,また何年も空いてしまった。いよいよ「岳飛伝」を読もうとしたとき,その前に「楊令伝」の15巻だけ読んだのだが,その前をさっぱり覚えていないことに気が付き,「楊令伝」を最初から読み直したので,「岳飛伝」を読み始めるのがだいぶ遅くなってしまった。

 

 「楊令伝」でかなり疲れていたので,「岳飛伝」は最初からテンションが上がらないまま読み始めた。

 そこから,8巻までの感想は,以前書いたとおり。

 月に1冊読むのもしんどかった。しんどくなりすぎて,途中,読むのをやめてしまったりもした。

 それでも,13巻あたりから,終わりが見えてきたせいか,急にスピードアップできて,週1冊とまではいかないが,かなりペースが上がってきた。主に「水滸伝」からの登場人物の死人が増えてきたからだろう。どんどん先が知りたくなってきたからだ。

 

 そして,最後までほぼ週1冊というペースを崩さずに,読み終えることができた。

 

 ほんと,長かった。そして,残念なことに,「楊令伝」で童貫が死んだ後あたりからは,かなり面白くなかった。

 理由は,前に書いたことがそのまま当てはまるが,付け加えると,やはり岳飛のキャラが結局よく分からなかったというのが一番だろう。それに,魅力ある新しいキャラがほとんど出て来なかった。せいぜい,程雲くらいだろう。岳飛や秦容の部下は,名前を覚えるのがやっと。それも,誰が誰だかさっぱり分からない。個性がないのだ。

 「楊令伝」以前からのキャラのことも書かないといけないので,手が回らなかったのだろうか。

 もっと早くに殺しておくか,説明だけでわざわざ登場させるのはやめればよかったと思う。無駄だなと思うエピソードが多すぎて,その分,岳飛たちが薄くなってしまった。

 

 キャラもだが,設定自体にもだんだん無理が出てきて,読んでて辛かった。

 「物流」がキーワードだったが,それだけで説明しきれるほど世の中簡単じゃない。「物流」,「物流」と言葉が出てくるたびに,白けてしまった。

 

 そして何より,岳飛と秦容はなぜ戦っているのか,途中から全く分からなくなってしまった。なぜいつまでも南宋と戦って,金に向かわないのか,全く分からない。

 だから,あの終わり方なのだろう。全く無責任な終わり方だと思う。将軍が死んだからといって終わるような戦じゃない,と繰り返し言っておきながら,最後は沙歇が死んだから終わり,というのは全然納得がいかない。だいたい,金はまだまだ滅びないし。

 

 ラストは悪くなかった。岳飛の最後も,もっと丁寧に書いてほしかったとも思うが,悪くはなかった。しかし,その前は,はっきり言ってクソだ。残念だ。北方先生力尽きた感が強く,がっかりした。

 ほかの登場人物がどうなったのかも,もっとちゃんと書いてほしかった。

 そして何より,梁山泊はどうなったのだ???南の方も???

 

 今,一つだけはっきりしている。「チンギス紀」は読まない。

 

 もう一つ,どうせ読むなら,「楊家将」と「血涙」をお勧めする。「水滸伝」は面白いが長すぎる。同じワクワクと感動をより短い時間で味わえるのはこの2つだと思う。