祝!レコード芸術創刊800号

 『レコード芸術』が2017年5月号で創刊800号を迎えた。

 1988年5月号以来,1号も欠かさず購読してきた。29年になる。これだけ長い間購読した雑誌はないし,全部取ってある。すごいことだ。田舎に住んでいたときは,発売日に買うのが大変なときもあった。452号からなので,349冊買い続けたことになる。半分までは行かないが,4割以上は購読していたことになる。

 452号の定価は850円。801号からは付録CDがなくなって本体価格が1,300円となる。単純に比較すると53%の値上がり。しかし,ページ数はかなり減っているので,実際はもっと値上がりしている計算になる。452号は数えると446ページ。800号は316ページ。800号の定価(本体価格)を1,300円とすると(実際は,付録CDと特別付録が付いているので,特別定価1,667円となっている。),1ページ当たりの単価は,452号が1.9円で800号が4.1円となる。ということは,116%の値上がりとなる。

 ちょうど,この4月から,MUSIC BIRDのTHE CLASSICで「片山杜秀パンドラの箱」の再放送をしており,この4月9日には2010年5月28日放送の「音楽雑誌と口蹄疫」が放送されたところだった。そこで片山さんは,「音楽雑誌が売れない売れないと言われ続けてもう10年以上経ちました」と,廃刊が続く音楽雑誌受難の時代について語っていた。そんな中,おそらく本質は変わらずに生き残ってきた『レコード芸術』は大したもんだと言っていいのだろう。

 

 452号をざっと見て思うのは,カラーページが多いのと,レコード会社の広告が多いこと。発行部数の推移は分からないが,やはりそれだけ売れていたのだろう。

 特集は「西ドイツのオーケストラ」。「西ドイツ」という名前自体が時代を感じさせるが,このときは壁が崩れるなんて全く想像もしてなかったと思う。<その1>として諸井誠さんの「西ドイツのオーケストラ随想」という文章が4ページあり,<その2>では「レコードでたどるその歴史と魅力」と題して,オーケストラごとの記事が書かれている。最初がバンベルク交響楽団(首席指揮者=ホルスト・シュタイン)で,最後がベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(音楽監督=ヘルベルト・フォン・カラヤン)。当然,お勧めのディスクが紹介されているのだが,この当時はまだCD化されていないものも多く,ベルリン・フィルの「ベスト・5・レコード」では76年のカラヤン指揮のチャイコフスキー『悲愴』が紹介されており,早くCD化されないかと心待ちにしたものである。

 452号からの新連載は「レコード芸術名盤コレクション 蘇る巨匠たち」で,レコード会社とタイアップしてCD化されていない名盤を毎月1枚ずつCD化するというものだった。第1回はフルトヴェングラーベートーヴェン交響曲第5番と《エグモント》序曲。このシリーズでは,セルの《エグモント》全曲を買った。

 月評は,交響曲では特選盤がアバドベートーヴェン交響曲第7番・第8番,同じくチャイコフスキーの《悲愴》,シャイーのマーラー交響曲第10番ほか。ほかには例えばデュトワビゼー,マリナーのレスピーギ,ゲーベルの《ブランデンブルク協奏曲》,プリッチャードの《イドメネオ》などが特選盤になっていた。オペラだけで新譜が7組も出ており,今では考えられない状況。

 CDは簡単には買えないので,毎日,NHK FMでカセットテープにエアチェックしていたものだ。

 当時は時間もあり,どの記事も繰り返し読んだものだが,1つ取り上げると,「追跡レコード批評」というコーナーで三浦淳史さんと中矢一義さんが海外雑誌の評を紹介していた。今の「海外録音評パトロール」(今も中矢一義さん!)の前身と言える記事だが,452号では三浦さんがカラヤンブラームス交響曲第1番と第2番を取り上げている。どちらもずっと愛聴しているCDなので,とても懐かしい。特に,第2番の記事は思い出深い。『グラモフォン』誌のアラン・サンダース氏の「いうなれば秋を想わせるような熱情をもって指揮しており,BPOの演奏には豊かな白熱の輝きがある」という文章はよく覚えていて,今でも秋が近づくとこの曲(特にこの演奏)が聴きたくなるし,『ル・モンド・ドウ・ラ・ミュジック』誌のシェルスノヴィッチ氏の「カラヤン自身の1955年盤と比較すると,昔の踊るような感じは抑えられているが」という文章を読んで1955年盤がとても聴きたくなったが,当時はCD化もされておらず,実際に聴けたのは相当後になってからだったことなどを思い出して懐かしい。もっとも,今はこの1986年盤と,同時期に収録されたDVD(こっちの方が4楽章などは明らかにテンポが速く勢いがある),そして1977・78年盤の3つが自分にとってのベスト盤になっており,よく聴いている。

 

 

 800号での重大な告知の1つが,付録CDの廃止だった。元々いらないと思っていたので,廃止されて値段が下がるのはありがたい。

 今回の付録廃止で,定価(本体価格)は1,400円から1,300円になるという。100円の値下げである。

 では,付録CDが始まった頃はどうだったかというと,1996年3月号(通巻546号)から始まったのだが,2月号と比べて定価(本体価格)は243円(消費税3%込みで250円)の値上げだった。

 それが今回は100円の値下げなので,付録廃止にかこつけて値上げしてるんじゃないか!とも思うのだが,そこはCDの原価が下がったからだということにしておこうと思う。

 

 値段のことばかり書いたが,それはこれからも買い続けるから。まずは1000号を目指して頑張ってほしい。