こむこむ館のサン・チャイルドのこと

 福島市の「こむこむ館」の前に設置されたヤノベケンジ氏制作の巨大なモニュメント「サン・チャイルド」が批判を浴びているという。当然だと思う。あまりにも無神経だ。

 

 サン・チャイルドは,ぱっと見,何と言うことはない,かわいい男の子の像である。それが,防護服か宇宙服のような服を着て,胸には線量計らしきものがついていて「000」を表示しているというもの。放射線がゼロだという意味らしい。そして,なぜか顔はアザと傷だらけで,よく見るとかなりこわい

 これに対して,放射線がゼロというのはあり得ない(世界中どこでもそうである),防護服を着ないといけないような所だ(だった)という誤解を招く,などの理由で批判を浴びている。

 この像は,ふくしま未来研究会という一般財団法人ヤノベケンジ氏から譲り受け,福島市に寄贈したものらしい。今月3日除幕式をやったという。

 除幕式をやるのに際して作られたらしいカードを手に入れた。「ふくしまに来た光の子 サン・チャイルドのニックネームをつけよう!!」というのをやっていて,応募用のハガキを配っていたよう。それによると,サン・チャイルドは,「未来からやってきた光の子。「サン」には「太陽」という意味もあるよ。」だそうで,サン・シスターという姉がいるそうである。さらに,作者の制作の意図は,「大きな夢と希望を与える希望のモニュメント」だという。

 これを読むとますます意味が分からなくなる。何で未来から来た光の子が防護服を着て,顔がアザと傷だらけなのか?この子に一体何が起きたのだろうか???

 

 ヤノベ氏も,福島市(木幡市長)も,ふくしま未来研究会も,無神経すぎる。こんなものをわざわざこむこむに置く意味が分からない。

 ヤノベ氏と木幡市長はコメントを出しているようだが,市長のコメントを読む限り,意味不明。市長本人が書いたのか担当部署で書いたのかは知らないが,この人大丈夫かと思ってしまう。

  ヤノベ氏はサン・チャイルドの服を「甲冑」だとか言ってるそうだが,後付けの苦し紛れの言い訳だろう。最初から本当に甲冑だと思って作ったとしたら,この人の頭はどうかしてる。

 また,脳科学者の茂木健一郎氏がブログで書いているのも見つけたが,論点がずれていて,やはりこの人も大丈夫かと心配になる。

 

 いろいろ屁理屈を並べて墓穴を掘る前に,さっさと撤去してほしい。こんなの,なくていい。設定を変えて,原発事故で酷い目にあった男の子ということにして,線量計の数字も変えて,東京電力本社の前にでも置いたらいいのではないか。

 

 

追記

 市民の批判を受けて,8月28日に木幡市長がサン・チャイルドの撤去を表明した。あまりにもお粗末な展開だが,まずは撤去と決まってよかった。

 設置に133万円を市が負担しており,撤去にも100万円以上かかる見込みだという。木幡市長は給与を減額するそうだが(当然,議会が通ればだが),どのくらい減額するのかは明らかでない。

 直接的な経費は以上だとしても,アンケートや諸々の事務手続にも職員の負担は相当なものがあっただろうと思う。

 さらにお粗末なことが起きていたと河北新報が報じていて,28日の記者会見のうち,モニュメントに関する質疑応答のみをカットして市のウェブサイトに動画配信していたのだという。事実関係がはっきりしないところもあるので,続報が出ると思う。

 今回の件は,キャリコネニュースによると,ヤノベ氏から,今回問題となったモニュメントと,同作品の10分の1スケール像が2016年に「ふくしま自然エネルギー基金」という一般財団法人に寄贈され,同基金から今年に入って市に寄贈したいという話があり,実際に市に寄贈したのは「ふくしま未来研究会」となったのだが,市は別団体からの寄贈になった詳しい経緯は不明だとしているという。なお,こむこむ前に置くことにしたのは,市の意向だという。市の意向というのが,担当部署が検討した結果なのか,木幡市長の指示なのか,その辺も気になるところではある。

 この辺にも,今回の出来事の不可解さが垣間見える。

 

 ヤノベ氏がこのモニュメントを作ったのは震災後間もない頃のことで,7年も経ってから福島市中心部に置かれることになるなど,想像もしてなかっただろう。そういう意味では,ヤノベ氏を責めるのは酷だと思う。今回の話を聞いたときに,市がここがいいと言っているのに,そこは問題だなどとは,考えもしなかっただろうし,思ってもなかなか言えなかったと思う。そういう意味からも,市がヤノベ氏個人への誹謗中傷はやめてほしいと言うのは当然だ。

 

 今後明らかにしてほしいのは,福島市,ふくしま自然エネルギー基金,ふくしま未来研究会の間でどのような経過があって寄贈を受けることになったのかということ。ここに一番きな臭さを感じる。市長選のときの貸し借りとかがあるのではないかと勘ぐってしまう。

 それと,市内部の意思決定プロセスも明らかにしてほしいと思う。こんなことで市の職員が対応に忙殺されるのは,市民にとって大きな損失だということを踏まえた上で,今後のことも考えてきちんと検証し,公表してほしい。

 

 いずれにせよ,こういうことがあると,ネーミングライツの件もそうだが,木幡市長は市民の気持ちを考えない,分からない人だ,と思われてしまうだろう。自分たちの市長がこういう人だという福島市民は不幸だ。早く挽回してほしい。

 

 

追記2)

 今日(9月5日),作者のヤノベケンジ氏が記者会見し,テレビで放送されていた。これからも堂々と関わっていきたいとか,市民と意見交換をしたいとか言っていたようだが,はっきり言ってもう関わらないでほしいと思う。何だかんだ言ったって,ヤノベ氏の宣伝にしかならない。どんな屁理屈を並べようがそうだ。我々市民は十分迷惑している。ヤノベ氏を誹謗中傷する気はないが,もういい加減にしてほしい。

 あんなのを今頃福島駅前に置こうという無神経さには,耐えられない。そんな人に支援してもらおうとは思わない。

 なぜ福島「市」に置くということになったのか,その経過も説明なしに,何を言ってるのかと思う。

 

 

追記3)

 撤去の日程も決まったとのことで,この件の報道もまだ収まる気配はないのだが,「違うのでは」と思うのは,風評被害を市民が心配しているから,と一々書かれること。今さら,福島市で,あんなもののせいで風評被害が起きるとは思えない。遠くから来て見た人は,別にどうとも思わないと思う。むしろ,「いいんじゃない!」くらいの感想だろう。実際,福島民友の記事なんかを読むと,そうだ。

 むしろ,あれだけ嫌われるのは,単に気持ち悪いということが大きいのではないかと思う。特にあの顔。前にも書いたが,なぜあんなにアザだらけで,絆創膏まで貼っているのか。微笑んでるという説明も見た気がするが,全然微笑んでいるようには見えない。むしろ,下から見ると悲しげに見える。

 ヤノベ氏には,なぜ顔がアザだらけなのか説明してほしい。防護服を着て,ヘルメットも持っているのにあんな顔をしているということは,防護服を着る前に何か酷い目にあったということだろう。それは一体何なのか。今回の原発事故のせいであんな顔になった人はどこにもいないはずだ。全く意味が分からない。

 そして,そのせいで,気味が悪く,怖いのだ。そういうのを,見たくなくとも見せられる市民のことを考えてほしい。見たくて来る人が見るものではないのだ。

 

 それと,いまだに設置に至る経緯が市長から説明されていない撤去に100万円以上かかるそうだが,その予算はどこから出てくるのかの説明もない。役所なのだから,予算が執行はできない。ということは,設置に当たっても予算を取っているはずで,議会にどう説明していたのか,していなかったのかも問題だ。だから,議会が黙っているのもおかしい。議会軽視だと騒いでいいはずだ。

 何から何までおかしなこの件,市長が報酬を返上するだけで済まないのは明らかなのだから,とにかくきちんと説明してほしい