ネルソンス指揮ウィーン・フィルのベートーヴェン《田園》

 MUSICBIRDのTHE CLASSICで,2017年3月23日にアンドリス・ネルソンスウィーン・フィルを指揮した演奏会が放送された(4月22日)。

 曲は,ドヴォルザークのチェロ協奏曲(独奏:アマーシュ・ヴァルガ)とベートーヴェン交響曲第6番《田園》。ほかに,ヴァルガによるアンコールも放送された。

 

 《田園》は,現在進行中のベートーヴェン交響曲全集録音の一環で,先に第3番《英雄》が演奏されており,2曲目となる。

 《英雄》については以前書いたが,全然いいとは思わなかった。

 

 今回の《田園》は,《英雄》に比べるとかなりオーソドックスな演奏で,要は特徴のないのが特徴の演奏だった。特にピリオド奏法を意識したような感じはなく,尖ったところのない穏やかな演奏に終始していたように思う。また,驚いたのは,第1楽章のリピートを省略していたこと。今どきかなり珍しい。一方,第3楽章はリピートをしていた。

 最近のネルソンスは,ブルックナーの演奏などで顕著なようだが,柔らかい響きを志向しているようで,中・低域を重視した響きをつくろうとしているように思う。いわゆるドイツ風のピラミッド型というのとも違うようで,高域が羽ばたかず,メロディーを重視しないので,もやもやしている。高域のメロディーが聴き取りにくいことが多い。

 そのため,どうにも欲求不満になる。特に,ウィーン・フィルは,ヴァイオリンなどの高音がゾッとするような美音を出すのにゾクゾクさせられるので,その辺が抑えられているのが不満。

 

 初めから期待してないのでいいが,せっかくウィーン・フィルとやるなら,もっと違った表現をしてくれたらなと思う。

 それと,確かこのチクルスは4年で完成させるということだが,《英雄》と《田園》でこれだけアプローチが違うと,最終的にどんな全集になるのか,心配だ。

 最近だと,ブロムシュテットが一本筋の通った全集を作ったが,それとは随分違った趣になりそう。

 そうだとすると,全集として一気にリリースするより,1枚ずつ出していった方が,変わりようが分かっていいのではないかと思う。