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インバル指揮 ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団演奏会

2017年3月15日(水)

福島市音楽堂

開場:18時

開演:18時30分

曲目:

 ①モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番ニ短調K.466

 ②マーラー交響曲第1番ニ長調《巨人》

 (アンコールなし)

演奏者:

 上原彩子(ピアノ)

 ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団

 指揮:エリアフ・インバル

 

 マーラーといえばインバル。インバルといえばマーラー。そのインバルが来てくれるとは!!!見た瞬間,背筋がゾクゾクした。そういえば,現役の指揮者で一番好きな指揮者って,インバルかも,って思った。

 オケは,旧東ドイツ(東ベルリン)のベルリン交響楽団が2006年に改称したもの。インバルは2001年から2006年まで首席指揮者を務めていた。ピアノは2002年の第12回チャイコフスキー国際ピアノコンクールで1位を取った上原彩子

 

 ステージに現れたインバルは意外と小柄だな,と思ったら,上原彩子はもっと小柄だった。スカイブルーの素敵なドレスを着て,颯爽と現れる。

 オケは今時にしては大きめの編成。コントラバス4本。こうでなくては,見栄えがしない。演奏が始まると,インバルらしく,ピリオドスタイルなど全く関係なしの演奏。上原のスタイルにもマッチする。

 このホールは残響がありすぎるせいか,ピアノは細かい音が聞こえず,オケは特にヴァイオリンの音が聞こえないのだが,この日の演奏は随分ましだった。それでも聞きづらいのには変わりなく,頭の中で,響いているであろう音を補完しながら聞くしかなかった。

 1楽章が終わったところで,遅れてきた人を2階のバルコニーに入れたが,靴の音が響いて,上原はなかなか演奏を始められず,気の毒だった。だが演奏は極上で,特に昼間部でのピアノとオケのからみがよかった。

 3楽章のカデンツァは聞いたことのないもの。上原のオリジナルかどうかは,プログラムを見ても不明。よく演奏されるベートーヴェンのものは,音楽の流れが一旦断ち切られて好きではないので,こちらの方がいいと思った。

 有名曲すぎて最近はあまり聞いていなかったが,すごくいい曲だと改めて思わされた。

 終わった後,上原は観客よりも先にオケのメンバーにこれでもかとお礼のご挨拶。客としては微妙な感じがするのだが,それだけオケの出来に満足したのだろうと思う。

 

 20分の休憩の後のマーラーは,本当にもの凄い演奏だった。

 冒頭は,聞こえないようなピアニッシモでなく,しっかり聞こえるように弾かせていたのがインバルらしい。一筆書きのように,神経質にならないで進む。トランペットのファンファーレは舞台の袖で吹かせていて,主部に入ると奏者3人がステージに現れた。ところどころでインバルの歌う声が響く。元東ドイツのベルリン交響楽団ということで,技術的にはどうかなと心配したが,金管をはじめここぞというときはビシバシ決まり,不安定なところはなかった。都響とのCDに比べると,ホルンが強力で,ここぞというときはバシッと決めてくれて気持ちよかった。

 ステージに溢れんばかりの大編成だが,この日のコントラバスは6本。ティンパニなどはオルガンの下に入ってしまい,音響的にどうかと思ったが,うまくバランスを取って演奏していたように思う。

 あっという間に1楽章が終わり,都響とのCDのようにアタッカで2楽章に入るのかと思いきや,指揮台を降りて何か始めたので,何だろうと思ったら,オケのメンバーに手伝わせて指揮台を少し前に出した。この日は暗譜で,譜面台なし。

 2楽章はノリノリで,冒頭からインバルもオケもスイングしまくっていた。コントラバスとチェロがキッパリしてて最高。こんなに楽しいこの曲の演奏は聞いたことがない。

 ところがここで事件が!後ろの席のジジイが,2楽章が終わったところで隣のばあさんに喋りだし,3楽章が始まってもやめようとしないという,信じられないことが起きた。「金髪が何とか」とどうでもいいことを喋っていた。ばあさんが注意して喋るのはやめたが,最最最低限のマナーも分からないなら来るな!喋りだす前にも,何かをゴソゴソさせて音を出していた。そもそも,来たくて来たような感じではなく,誰かに券をもらったのでヒマだから来たというような感じに見えた。

 そんなイライラさせるような状況で3楽章は始まったが,ここでも,今まで聞いたことのないような素晴らしい演奏で,普通なら眠くなるのだが,全然眠くならないで最後まで聞けた。途中,曲想が変わるところでインバルは切り替わりがはっきり分かるよう演奏していて,この曲の分裂症的なところがはっきり分かった。

 4楽章も,冒頭からオケが乗りまくっていて,20分近くかかる長い楽章が,あっという間だった。弦楽器奏者の何人かが,弾き終わるたびに弓を高く上げる動作をして,楽しくてしょうがない様子がよく分かった。トゥッティのドカんというところが一々ビシッと決まるのも聞いていて気持ちよかった。コーダではホルン全員とトランペット1人が立ち上がって演奏し,最後の1撃はティンパニ入りで終わった。

 この日のコンマスは日下紗矢子さん(たぶん)で,見栄えがするだけでなく,ソロの演奏もとてもよかった。いつもこのホールでは聞こえなくてイライラするヴァイオリンのパートが,はじめてというくらいよく聞こえた(といっても,やはりもやもやするのだが)。尻上がりに聞こえがよくなったように思うので,インバルとオケのメンバーが演奏しながらよく聞こえるように修正していったのだろうか。

 こうして実演を聞くと,マーラーのいろいろな仕掛けがよく分かる。CDはもちろん,テレビ中継でも分からないことがたくさんあるんだと,今回初めて分かった気がする。

 とにかく,オケのメンバーが楽しそうに演奏しているのが印象的だった。終わった後もみな満足そうな表情。この演奏の後にアンコールはあり得ないなと思った。

 今までこのホールで聞いたオーケストラの演奏会の中では,間違いなくナンバーワンだった。

 

 会場では,オーケストラからのプレゼントということで,幾つかのグッズをプレゼントしていた。そのうち,ポストカードをもらってきた。

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 また,パンフレット(500円)と一緒に,会場限定(と思われる)CDも売っていた(2,000円)。

ブゾーニ:踊るワルツOp.53

R.シュトラウスアルプス交響曲Op.64

ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団

指揮:エリアフ・インバル

①は2001年8月31日,②は2003年10月24日,どちらもベルリンのコンツェルトハウスでの演奏。①は自由ベルリン放送,②はベルリン・ブランデンブルク放送の音源。©2017年となっているので,今回のツアー向けに作られたつくられたものと思われ,日本語の解説がついているばかりか,ジャケット表紙に日本語で曲名が書いてあるというレアもの。

 残念なのは,アルプス交響曲が1トラックなこと。また,どうせならマーラーがよかった。

 演奏は,アルプス交響曲は演奏時間が約45分52秒(拍手なし)と速いテンポでぐいぐい進めていき,初めのうちは今ひとつオケが乗らない感じだが,徐々に乗ってきて,所々でインバルの濃い表現が聞かれる充実した演奏だった。

 ブゾーニは,初めて聞く珍しい曲なのでコメントできないが,最後は拍手入り。

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 今回のツアーでは,3月13日から22日にかけて,東京,高崎,福島,福井,横浜,大阪,名古屋,東京と回るようだが,どこかの演奏会をNHKで収録して放送してくれないだろうか。

 

 それと,1987年11月3日のフランクフルト放送交響楽団との来日公演をブルーレイで復刻してほしい。NHKが収録,放送したもので(確か,今はなき教育テレビとFMの同時放送だった),以前,DENONからLDが出ていたが,DVD化はされずにそのままになっている。LDでは前半の《ハフナー》交響曲はカットされていたが,あわせてブルーレイ化してほしい。もの凄い演奏なのだ(最後の方でティンパニが間違うというハプニングがあるが,逆にすごくハマっている)。

 

 

【追記】

 4月2日(日)夜9時からのEテレクラシック音楽館」で3月13日にすみだトリフォニーホールで行われた演奏会が放送されることが分かった。

 曲目は,ワーグナーの楽劇《トリスタンとイゾルデ》から前奏曲と愛の死,そしてマーラー交響曲第5番。楽しみだ。